黄泉比良坂の戦い
特徴
天教山のイザナギ・日の出神が率いる神軍と、常世の国の大国彦・大国姫が率いる魔軍とが戦うが、大国姫がイザナミになり済ましたため、表向きはイザナギとイザナミの夫婦の戦いという形になっている。それは魔軍が黄泉島を足がかりに天教山に攻め込むための陰謀であった。だが実は魔軍の陰謀を察知した神軍が、魔軍を決戦へと誘い込んだのであった──という複雑な話になっている。
邪神が正神の名を偽り味方をも騙す一方で、正神側も偽者を出したり偽の情報を流すなどして、邪神らを二重三重に騙して攪乱して行く。
最後に魔軍は言向け和され改心し、イザナギによって神界の職掌が与えられる。
エピソードの範囲
黄泉比良坂での戦闘シーンは第10巻第21章「桃の実」#と第24章「言向和」#だけしかなく、その部分だけを「黄泉比良坂の戦い」と捉えるとあまりにも説明不足となる。本項では、黄泉比良坂で神軍と魔軍の決戦が行われることになった理由や背景、決戦までのプロセスも含めて、「黄泉比良坂の戦い」として捉え、説明することにする。
第8巻第6篇「黄泉比良坂」(第39~43章)及び第10巻第2篇「禊身の段」(第27~31章)は、古事記の「火神被殺」「黄泉の国」「禊身」の段の言霊解になっている。この範囲、つまり古事記で火の神が生まれたところから、イザナギが身禊をするところまでを、霊界物語の黄泉比良坂の戦いのエピソードとして考えることにする。
呼称
舞台
第10巻の第1~20章は主に、魔軍(常世神王大国彦)の本拠地がある常世の国が舞台になる。
黄泉島が舞台となるのは第10巻第21章「桃の実」#と第24章「言向和」#だけである。
【第8巻】
- 第1~5章前半:朝日丸の船上(筑紫島から高砂島へ渡る船)
- 第5章後半~7章前半:テルの国の山中(ここから高砂島)
- 第7章後半~10章:蛸取村、アリナの滝、鏡の池
- 第11~12章:海の竜宮(海底)
- 第13~14章:ヒルの都
- 第15~19章:ブラジル山
- 第20~27章:滝の村、闇山津見の館
- 第28~29章:ハルの都
- 第30~36章:珍山峠、大蛇峠
- 第37~38章:ウヅの都、正鹿山津見の館(ここまでが高砂島)
- 第39~43章:古事記の「火神被殺」と「黄泉の国」の段の言霊解
【第9巻】
- 第1~2章:エデンの渡場(メソポタミヤ)
- 第3~7章:三笠丸の船上(筑紫島のヨルの港から高砂島のテルの港へ渡る船)
- 第8~12章:ウヅの都の正鹿山津見の館(ここから高砂島)
- 第13~17章:照山峠
- 第18~20章:ハラの港、アタル丸の船上
- 第21~26章:アタルの港、玉山、高照山(ここまでが高砂島)
- 第27~37章:間の国、春山彦の館
【第10巻】
時間経過
第8~10巻は、とある年の春から翌年の春までの、およそ一年間に起きた出来事である。
第8巻第1~38章と第9巻第1~8章はほぼ同じ時期(春~夏)に起きた出来事である。それぞれ別のストーリーとして始まるが、第8巻第38章と第9巻第8章で二つのストーリーが繋がる(松竹梅の三姉妹が父・正鹿山津見の館を訪れる)。
第9巻第27~37章と第10巻第1~8章は同時期(冬の初め)に二つの場所(間の国と常世城)で起きた、相互に連関する出来事である(間の国で捕まった松竹梅の宣伝使らが常世城に連れて行かれる)。
黄泉島での戦闘は翌春(第10巻第21章・第24章)に行われる。
【第8巻】
- 第1~14章:春
- 第15~24章:春~夏
- 第25~38章:夏
【第9巻】
- 第1~2章:春
- 第3~7章:春~夏
- 第8~26章:夏
- 第27~37章:冬
【第10巻】
- 第1~8章:冬
- 第9~26章:春
各章の季節
【第8巻】
- 第8巻第1章「朝日丸」#:「春」[2]
- 第8巻第14章「秘露の邂逅」#:「春」[3]
- 第8巻第15章「ブラジル峠」#:「春」[4]
- 第8巻第18章「巴留の関守」#:「夏」[5]
- 第15章から第24章までは、おそらく一日の間に起きた出来事のはずだが、季節が「春」から「夏」に変わっている。春と夏の間くらいの時期か?
- 第8巻第27章「沙漠」#:「夏」[6]
- 第8巻第30章「珍山峠」#:「夏」[7]
- 第8巻第37章「珍山彦」#:「夏」[8]
【第9巻】
- 第9巻第1章「都落」#:「春」[9]。松竹梅の三姉妹は「三月三日」[10]に聖地エルサレムの館を旅立った。
- 第9巻第3章「三笠丸」#:「春」[11]
- 第9巻第4章「大足彦」#:「春」[12]
- 第9巻第6章「刹那信心」#:「夏」[13]
- 第9巻第9章「鴛鴦の衾」#:「夏」「五月五日」(松竹梅がウヅの都に到着した日)[14]である。
- 淤縢山津見は数日滞在の後、出発する。[15]
- 第9巻第18章「初陣」#:5月13日[16]
- 第9巻第27章「月光照梅」#:「冬の初め」[17]
- 第9巻第29章「九人娘」#:「初冬」[18]
第9巻第27~37章(間の国の春山彦の館が舞台)と、第10巻第1~8章(常世城が舞台)は、同時間帯に起きた出来事である。大国彦の家来の(1) 照山彦・竹山彦、(2) 中依別、(3) 遠山別がそれぞれ、間の国で(1) 松竹梅の宣伝使、(2) 照彦、(3) 月雪花の三姉妹(ただし全員本物ではなく白狐が化けた偽者)を捕まえて、常世城に護送する(下記参照)。わずかな時間(1日以内)で起きた出来事のはずだが、常世城と間の国は300里も離れており[19]、そこを徒歩で移動しているので、時間や距離を無視してストーリーが展開している。
- 第9巻第29章「九人娘」#:【間の国】照山彦・竹山彦が、松竹梅の宣伝使を捕まえる。
- 第10巻第1章「常世城門」#:【常世城】照山彦・竹山彦が、松竹梅を護送して、帰城する。
- 第9巻第36章「偽神懸」#:【間の国】中依別が、照彦を捕まえる。
- 第10巻第5章「狐々怪々」#:【常世城】中依別が、照彦が護送して、帰城する。
- 第10巻第5章「狐々怪々」#:【常世城】偽常世神王(広国別)が遠山別に、月雪花の三姉妹を捕まえに行くよう命じる。
- 第9巻第37章「凱歌」#:【間の国】遠山別が、月雪花の三姉妹を捕まえる。
- 第10巻第7章「思はぬ光栄」#:【常世城】遠山別が、月雪花を護送して、帰城する。
【第10巻】
主な人物
黄泉比良坂の戦いは、イザナギ・日の出神を始めとする神軍と、大国彦・大国姫を始めとする魔軍との決戦である。黄泉島の黄泉比良坂において、日の出神が率いる十六神将や桃の実(松竹梅と月雪花)が、偽イザナミ(大国姫)が率いる魔軍と戦い、神軍が勝利する。
しかしその戦闘シーンは第10巻第21章「桃の実」#と第24章「言向和」#だけにしか描かれていない。
第8巻から第10巻にかけて描かれる黄泉比良坂の戦いの一連のエピソードにおいて最も多く登場するのは淤縢山津見である。大洪水前は醜国別と名乗り、大国彦の宰相格だった淤縢山津見が、日の出神によって海の竜宮から救出され、三五教の宣伝使となって高砂島を旅をする。その道中で多数の弟子が出来て、彼らが身魂磨きの旅をすることで宣伝使として成長して行く。その彼らが十六神将や桃の実となって黄泉比良坂の戦闘で活躍するのである。
淤縢山津見自身は、弟子を一人(固虎)だけ伴いロッキー城に入り、魔軍のトップである偽日の出神(淤縢山津見のかつての主だった大国彦)を言向け和す。黄泉比良坂での戦闘シーンを除けば、黄泉比良坂の戦いのエピソードの主人公は淤縢山津見だという見方が出来る。
神軍
- イザナギ:
- イザナミ:
- 日の出神:
- 駒山彦(後に羽山津見に改名)【十六神将】:初登場は第8巻第1章「朝日丸」#:元は邪神(常世姫の部将)。
- 正鹿山津見(旧名・桃上彦)【十六神将】:初登場は第8巻第11章「海の竜宮」#:松竹梅の三姉妹の父。
- 淤縢山津見(旧名・醜国別):初登場は第8巻第11章「海の竜宮」#:元は邪神(大国彦の宰相)。
- 蚊々虎(後に珍山彦に改名):初登場は第8巻第13章「修羅場」#:元は邪神(醜国別の部下)。
- 荒熊(本名は高彦。後に原山津見に改名)【十六神将】:初登場は第8巻第17章「敵味方」#:元は邪神(醜国別の部下)。
- 闇山津見【十六神将】:初登場は第8巻第24章「盲目審神」#:ハルの国の東半分を治める酋長。五月姫の父。
- 松竹梅の三姉妹(松代姫・竹野姫・梅ケ香姫):初登場は第8巻第38章「華燭の典」#:正鹿山津見の娘。黄泉比良坂の戦いで「桃の実」として活躍する。
- 照彦(後に戸山津見に改名)【十六神将】:初登場は第9巻第1章「都落」#:松竹梅の従者。
- 虎公(後に志芸山津見に改名)【十六神将】:初登場は第9巻第18章「初陣」#:元は悪党。
- 熊公(後に石拆神に改名)【十六神将】:初登場は第9巻第18章「初陣」#:熊公の友人。
- 鹿公(後に根拆神に改名)【十六神将】:初登場は第9巻第23章「高照山」#:熊公の友人。
- 月雪花の三姉妹(秋月姫・深雪姫・橘姫):初登場は第9巻第29章「九人娘」#:春山彦の娘。
- 固虎(後に固山彦に改名):初登場は第10巻第2章「天地暗澹」#:元は邪神(照山彦の部下[25])。
- 月照彦神・足真彦神・少彦名神・弘子彦神:スサノオの四魂。
名前に「津見」が付く者の多くは、黄泉比良坂の戦いで十六神将に任じられている。 →「十六神将#黄泉比良坂の戦いの十六神将」
次の人物は黄泉比良坂の戦いには参加しないが正神(三五教)側の人物である。
- 清彦(後に紅葉彦命に改名):元は邪神(棒振彦の参謀)。三五教の宣伝使になり、ヒルの国の守護職となった。
- 猿世彦(後に狭依彦に改名):元は邪神(常世姫の部将)。三五教の宣伝使になり、テルの国で三五教を広めた。
- 五月姫:闇山津見の娘。正鹿山津見と結婚する。
- 大蛇彦:実は木花姫命の化身。
- 春山彦:間の国の酋長。月雪花の父。
- 夏姫:春山彦の妻。
魔軍
ストーリーの構成
黄泉比良坂の戦いの物語は第8~10巻に描かれており、第6巻・第7巻にその伏線が張られている。
第6巻でこの物語の発端となる、火の神(火の文明の象徴)をイザナミが生んで黄泉の国へ行ったことが記されている。この段階ではまだ黄泉比良坂の戦いが起きることは何も記されていない。
第7巻では日の出神が常世の国へ旅立ち、戦いに向けてのプロローグとなる。しかし黄泉島が戦場になることは記されていない。
第7巻のほとんどは、日の出神が常世の国へ向かう道中でのエピソードであり、黄泉比良坂の戦いとは関係がない。
第8~9巻は高砂島や間の国を舞台に宣伝使が養成されて行く。一見、黄泉比良坂の戦いとは関係がないように見えるが、随所に「黄泉比良坂の神業に参加せよ」というようなフレーズが出て来て、決戦に向けたムードが高まって来る。[27]
第8~9巻で養成された宣伝使のほとんどは、黄泉比良坂の戦いで活躍することになる。
黄泉比良坂の戦いに初めて言及されるのは第8巻第7章「蛸入道」#である。清彦のセリフに「汝ら二人は吾改心を手本として、一時も早く片時も速かに悪を悔い、善に立帰り、世界の鏡と謳はれて、黄泉比良坂の神業に参加せよ」と出て来る。その後の猿世彦のセリフにも「せめて曲りなりにでも宣伝使になつて、今までの罪を贖ひ、身魂を研いて、黄泉比良坂の神業に参加したいものだ」と出る。しかしこの時点では「黄泉比良坂の神業」とは一体何のことなのかは全く記されていない。
その一部分が判明するのは第8巻第24章「盲目審神」#の章末の「附言」である。そこには次のようなことが記されている。
- イザナミが火の神(カグツチ)を生み、その結果イザナミは黄泉国(ここでは黄泉島のこと)へ至った。それは黄泉国から葦原の瑞穂国(日本)へ攻め来たる曲津神たちを黄泉国に封じて、地上に現れないようにするための牽制的な神策であった。
- その後、黄泉神たちは海の竜宮に居所を変え、再び葦原の瑞穂国を攪乱しようとしたため、イザナミは海の竜宮へ至り、牽制的経綸を行った。
- 日の出神が海の竜宮に現れた時、乙米姫命がイザナミの身代わりとなり、黄泉神たちをそのまま海の竜宮に封じておき、イザナミ本人は日の出神に連れられて、ロッキー山に行くと言挙げした。
- しかし実際にはロッキー山には行かず、密かに日の出神や面那芸司と共に、イザナギがいる天教山に帰った(その後、地教山に身を潜めた[28])。
- だが世の神々はこの水も漏らさぬ経綸を知らず、ロッキー山に現れたイザナミや日の出神は本物だと信じていた。実はロッキー山の日の出神は常世神王大国彦が化けた偽者であり、イザナミはその妻・大国姫が化けた偽者である。
- 大国彦は八岐大蛇が、大国姫には金毛九尾の悪狐が憑依しており、イザナミと日の出神と偽称して、種々の作戦計画を進め、ついに黄泉比良坂の戦いを起こした。
ここに書いてあることは、黄泉比良坂の戦いに至るプロセスである。偽イザナミ・偽日の出神が一体誰と戦うのかは記されていない。
この第8巻の最後の第6篇の篇題は「黄泉比良坂」であり、古事記の「火神被殺」と「黄泉の国」の段の言霊解になっている。第8巻第43章「言霊解五」#に「是が最后の世界の大峠であります。すなはち神軍と魔軍との勝敗を決する、天下興亡の一大分水嶺であります」と記されているため、「黄泉比良坂の神業」(黄泉比良坂の戦い)とは神軍と魔軍との決戦であることが何となく推測できる。
第8~9巻は戦いの準備段階であるが、第10巻で実際に戦いとなる。常世の国から魔軍が黄泉島に出陣するシーンが第10巻第13章「蟹の将軍」#にあるが、黄泉島での戦闘シーンそのものは第21章「桃の実」#と第24章「言向和」#だけしかない。第10巻の多くは、常世の国(常世城、ロッキー城、ロッキー山城)を舞台にした淤縢山津見や竹山彦(鬼武彦)による魔軍への攪乱工作が描かれている。 →「#神軍の作戦」
第23章と第24章で魔軍のトップである大国彦と大国姫は言向け和され、神軍の勝利となった(第23章「神の慈愛」#、第24章「言向和」#)。
第26章でイザナギは神々の職掌を定めるが、改心した元邪神たちにも職掌が与えられている。
【第6巻】
【第7巻】
- 第8~9章:日の出神が天教山で木花姫命に常世の国の魔神征服を命じられる。
- (これ以降は、日の出神が常世の国へ行く道中での、白雪郷や竜宮島、筑紫島などでのエピソード。黄泉比良坂の戦いとは直接関係がない。)
【第8巻】
- 第1章:朝日丸の船上で、日の出神とその弟子となる清彦・駒山彦・猿世彦が出会う。
- 第5~10章:日の出神の弟子たちのエピソード。
- 第11~12章:日の出神が海の竜宮に行き、イザナミや淤縢山津見・正鹿山津見らを救出。
- 第13~38章:淤縢山津見を中心とするエピソード。ヒルの都からハルの都を経てウヅの都まで旅を続ける。第38章で正鹿山津見の館に松竹梅の三姉妹が現れる。
- 第39~43章:「火神被殺」「黄泉の国」の言霊解。
【第9巻】
- 第1~12章:松竹梅の三姉妹が聖地エルサレムを旅立ち、ウヅの都へ向かう。第9章で父・正鹿山津見の館に到着する。
- 第13章:淤縢山津見の一行7人は常世の国へ向けて旅立つ。
- 第14章:一行は二手に分かれる。
- 第15~17章:淤縢山津見・駒山彦・照彦の3人のエピソード。
- 第18~22章:珍山彦・松竹梅の宣伝使の4人のエピソード。
- 第23~26章:その弟子となった虎公ら3人のエピソード。
- 第27~37章:間の国で松竹梅と月雪花が出会う。彼女ら(白狐が化けた偽者)は大国彦の部下に捕まり常世の国に連行される。
【第10巻】
神軍の作戦
常世の国の邪神(常世神王大国彦の勢力)が黄泉島を足がかりに、天教山へ攻め込もうという陰謀に対して、正神側は正面から戦う正攻法以外に、その陰謀を打ち砕くための裏工作を多数行っている。黄泉比良坂の戦いの物語は、正面からの戦い(第21章・第24章)よりも、裏工作の方が多く記されている。
- まず最初に、日の出神とイザナミが「ロッキー山に行くと言挙げして実際には行かない」という陽動作戦を行った。
- 黄泉島への進撃は、神軍の方が先に行っている。魔軍がそれを迎え撃つために出陣している。つまり黄泉比良坂の戦いの火蓋を切ったのは神軍ということになる。
第10巻には、魔軍の拠点である常世城・ロッキー城・ロッキー山城で、神軍側によって多数の工作が行われている。
- 第10巻第1~8章(第9巻第29~37章)で、間の国で捕まえた松竹梅の宣伝使、照彦、月雪花の三姉妹が護送されて来るが、全部白狐が化けた偽者だった。(白狐の神である鬼武彦が竹山彦と名乗り鷹取別の部下になって常世城に潜入している)
- 本物の松竹梅、照彦、月雪花は、すでに黄泉島に渡っている。[30]
- 第3章で、城内に突然現れた玉が照山彦・鷹取別・偽常世神王(広国別)にぶつかる。転倒した3人を、竹山彦が松竹梅に命じて介抱させたことで、竹山彦・松竹梅は偽常世神王の信頼を得て、重用されるようになった。
- 第8章で、常世城内にいたはずの偽常世神王らは、ふと気がつくと城外の馬場で泥まみれになっていたという、怪奇現象が起きる。
- 第17章で、ロッキー城に入った淤縢山津見は偽日の出神(大国彦)に対し「自分は三五教の宣伝使に化けて敵(三五教)の動きを探っている」という嘘をつく。
- 照彦が蚊々虎(元は大国彦の家来)に化け、月雪花(白狐の変化)が松竹梅に化け、「松竹梅を捕まえて来た」と嘘をつき、偽日の出神(大国彦)の信頼を得る。
- 固山彦(固虎)が「昨年、常世城の広国別が送って来た松竹梅は、広国別の妖術によるもの。広国別は天教山に通じて、あなたの計画を覆そうとしている」と嘘をつく。怒った偽日の出神(大国彦)は広国別を捕まえるよう命じる。
- 第20章で、黄泉島に出陣した竹山彦(鬼武彦)が大軍を引き連れ常世城に帰城した。広国別に「ロッキー城の大国彦が広国別を捕まえようとしているので、逆に大国別を捕まえるべき」と進言する。偽常世神王(広国別)はロッキー城へ攻め込み、それを知ったロッキー城では黄泉島へ向かう軍を帰城させた。この仲間割れによって黄泉比良坂の戦いに出た魔軍の兵力は大半が削がれることになった。
- 第22章で、黄泉島に出陣した大雷・火雷と偽桃の実の国玉姫・杵築姫・田糸姫が常世城に帰城する。5人は偽イザナミに変じている大国姫を嘲笑い、大きな白狐に変わった。
- 第23章で、偽日の出神(大国彦)はロッキー山城へ行き、偽イザナミ(大国姫)に黄泉島への出陣を命じる。そこへ淤縢山津見・固山彦がやって来て「ロッキー城は敵(広国別の軍)に占領されてしまった」と報告する。大国彦はロッキー城に戻るが、そこには敵の姿も味方の姿もなく、狐の鳴き声だけがした。大国彦は孤立してしまう。
なお、たとえ相手が邪神であっても嘘をついて騙すようなことは、国祖神政の時代には決して許されることではなかった。だが和光同塵の時代においては、ある程度やむを得ないこととされている。
魔軍の作戦
【イザナミ・日の出神の偽者】
イザナミ・日の出神がロッキー山に行くと言挙げしたことを知った大国彦は、それを利用して、自ら偽のイザナミ・日の出神になりすました。
その理由については記されていない。
推測だが、黄泉島や天教山に進軍するため、高級神であるイザナミの知名度や信用を利用して、魔軍の勢力を拡大しようとしたのではないか? ロッキー山にイザナミが来たことで常世神王の勢力が盛んになったこと[31]や、イザナミ・日の出神がロッキー山でウラル教を開いたということ[32]、自分はイザナミ・日の出神がロッキー山に現れたということを聞いて常世の国に来た、自分も三五教からウラル教に改宗するということ[33]が、登場人物のセリフ中で語られている。
【桃の実の偽者】
照山彦・竹山彦(鬼武彦)が間の国で捕まえた松竹梅の宣伝使を護送し常世城に帰城した時に、竹山彦がこの三人を「黄泉比良坂の桃の実」として戦場に派遣すれば、その美しさに敵(神軍)は帰順するはず、と偽常世神王(広国別)に注進している。[34]
しかしその三人が消えてしまった(この三人は白狐が変化した偽者だった)。[35]
偽イザナミ(大国姫)は、松竹梅がいないとこの戦いはないと思った。[36]
古事記との比較
古事記の黄泉比良坂の戦いは、イザナギとイザナミの夫婦の戦いという形になっている。
それに対して霊界物語の黄泉比良坂の戦いでは、イザナミは邪神が化けた偽のイザナミであり、正神(イザナミ)対邪神(イザナミ)の戦いという形になる。[39]
主なエピソード
第6巻
大洪水後、ナギナミ二神により美斗能麻具波比の神業が行われ、陸地(島)が生まれ神や人が生まれた〔第6巻第21章「真木柱」#~〕。やがて人間の数が増えるにつれ次第に悪化し、再び体主霊従の世になって行く。カグツチ=火の神(火の文明[40])が現れ、地上が混乱する[41]。イザナミはそれに驚いて、黄泉国(=地汐の世界)に逃げ帰った[42] [43] [44]。〔第6巻第29章「泣沢女」#、第30章「罔象神」#〕
イザナミが「邪神の根源地」[45]である黄泉国に行ったのは、黄泉国から葦原の瑞穂国(日本)に荒び来る曲津神たちを黄泉国に封じて、地上に現れないようにするための牽制的な神策であった。その後、黄泉国の曲津神たちは海の竜宮に居所を変え、再び葦原の瑞穂国を攪乱しようとしたため、イザナミも海の竜宮に行き、牽制的経綸を行っていた。〔第8巻第24章「盲目審神」#附言〕
イザナミは黄泉国の穢れを海の竜宮に集め、それまで安楽郷だった海の竜宮はすっかり根底の国と成り果ててしまった[46]。
第7巻
日の出神は大台ケ原の岩窟から八岐大蛇を追い出した後、船に乗り東へ向かう。三保の松原で三保津彦・三保津姫が現れ、木花姫命の神勅として「常世の国へ渡れ。常世の国で魔神(大台ケ原にいた八岐大蛇)が御国(日本)を襲う計画を立てている」[47]と告げられる。日の出神はその後、天教山に登り、木花姫命に面会し、常世の国への出発を命じられた。田子の浦から常世の国へ向かう常世丸に乗り込む。〔第7巻第8章「羽衣の松」#~第9章「弱腰男」#〕
日の出神は、月氏国の白雪郷、ニュージーランド、竜宮島を経由して、筑紫島に上陸する。筑紫島を宣伝に回り各地の守護職を定めた。その後、再び常世の国を目指して旅立った[48]。〔第7巻第9章「弱腰男」#~第46章「白日別」#〕
第8巻
日の出神は筑紫島から朝日丸に乗り高砂島へ向かった。乗客の雑談から、面那芸司(白雪郷の酋長で、日の出神に出会ってから宣伝使になり、日の出神に同道して、一緒に筑紫島を回っていた。最後に別れて天教山へ向かった[48])が乗った船が沈んだと聞いて[49]、面那芸司を救うために海の竜宮へ向かうことにする。日の出神は清彦(船中で出会い、日の出神の弟子になった)に「テルの都へ行って三五教の宣伝をせよ」と命じ、その仲間の猿世彦・駒山彦にも「心を改め神の教えに従えよ」と伝えると、海に飛び込み、巨大な亀(琴平別神)の背に乗って海の彼方へ進んで行った。〔第8巻第4章「烏の妻」#~第5章「三人世の元」#〕
(駒山彦は後に羽山津見と改名し十六神将の一人として黄泉比良坂の戦いで活躍する)
日の出神が海底[50]の海の竜宮に着くと、門番に正鹿山津見と淤縢山津見がいた。二人はかつて天使長だった桃上彦と、大自在天大国彦の宰相・醜国別のなれの果てだった。奥殿から阿鼻叫喚の声が聞こえてくる。行ってみると、イザナミ(日の出神の母神)が八種の雷神や、醜女探女、黄泉神の群れに取り囲まれ悩まされていた。面那芸司はイザナミを救うために必死に戦っていたが力及ばず、その声が門外に漏れていたのであった。そこへ乙米姫命が現れイザナミの身代わりになることを申し出る。イザナミに付いていた醜神らは乙米姫命に飛び付いた。日の出神はイザナミ、面那芸司、正鹿山津見、淤縢山津見を連れ、巨大な亀に乗って海の竜宮を抜け出した。海面に浮き出て、常世の国に渡り、イザナミをロッキー山に送り届けた[51]。〔第8巻第11章「海の竜宮」#~第12章「身代り」#〕
(この時点ではまだ、イザナミがロッキー山に行かずに天教山に帰ったことは明かされていない)
清彦はテルの国からヒルの国へ進んだ。ヒルの都で清彦が「仮日の出神」(日の出神の代理だと自称している)として三五教の宣伝をしていると、蚊々虎が清彦の過去の悪業(大洪水前は悪神の一派だった)を暴き立てる。聴衆はその真偽に迷い、論争となり、大騒動となる。そこへ日の出神が淤縢山津見と正鹿山津見を伴い現れて、騒動を静めた。〔第8巻第13章「修羅場」#~第14章「秘露の邂逅」#〕
(ここから淤縢山津見がストーリーの中心人物になる)
淤縢山津見は蚊々虎(かつての淤縢山津見=醜国別の家来だった)を連れてハルの国へ宣伝に向かう。ヒルとハルの国境にあるブラジル峠を下って行くと、関所があり「鷹取別が治めるハルの国へ他国の者は入れない」と行く手を阻まれる。淤縢山津見は関守の荒熊を帰順させた。(荒熊の元の名は高彦で、かつての醜国別の家来だった)〔第8巻第15章「ブラジル峠」#~第18章「巴留の関守」#〕
(荒熊は後に原山津見に改名し十六神将の一人として黄泉比良坂の戦いで活躍する)
淤縢山津見は荒熊に案内させハルの都へ向かう。途中の「滝の村」で五月姫(ハルの国の東半分を治める闇山津見の娘)と出会い、その館に泊まる。淤縢山津見は闇山津見に「イザナミがロッキー山に現れたと鷹取別から聞いたが本当か」と尋ねられ「自分は海の竜宮からイザナミのお供をして来たが、ロッキー山に行くと言っていたから本当であろう」と答える。すると蚊々虎が神懸かり「ロッキー山のイザナミは大国姫が化けた偽者だ」と言うが、淤縢山津見はそれは邪神が懸かって嘘をついているのだろうと考え信じなかった。〔第8巻第19章「刹那心」#~第24章「盲目審神」#〕
(第8巻第24章「盲目審神」#章末の「附言」に、実は大国彦が日の出神と名乗り、大国姫がイザナミと名乗って、黄泉比良坂の戦いを起こすため作戦を進めていることが記されている)
闇山津見の館に駒山彦がやって来た。駒山彦はテルの国で宣伝をしていたが、ハルの国に宣伝使が現れたと聞いてやって来たのだった(駒山彦はかつて蚊々虎の仲間[52])。淤縢山津見一行に、駒山彦と五月姫も加わり、5人(淤縢山津見・蚊々虎・荒熊・駒山彦・五月姫)でハルの都へ向かう。都へ入ると、鷹取別らは幾千もの天の磐船・鳥船に乗って空の彼方に逃げ去った。淤縢山津見は高彦(荒熊)を原山津見と命名し、ハルの国の西部の守護職[53]とした。〔第8巻第25章「火の車」#~第29章「原山祇」#〕
淤縢山津見一行4人はウヅの国へ向かって旅立った。珍山峠の谷間の温泉で倒れていた正鹿山津見を見つける。正鹿山津見はヒルからハルへ向かったが、鷹取別の手下の駱駝隊に襲われ砂漠の中に葬られた。自力で脱出し、この温泉で養生していたが、湯に上せて失神して倒れてしまったのだった。〔第8巻第30章「珍山峠」#~第31章「谷間の温泉」#〕
一行に正鹿山津見も加わり、ウヅの都を目指す。大蛇峠で蚊々虎が、横たわっていた大蛇を言向け和す。その大蛇の背中に乗って一行は山を下った。(ここで蚊々虎は自ら珍山彦と改名する)〔第8巻第32章「朝の紅顔」#~第37章「珍山彦」#〕
淤縢山津見一行はウヅの都の正鹿山津見の館に到着した。蚊々虎の提案で、正鹿山津見と五月姫が結婚することになった。直会の最中に、正鹿山津見の娘である松竹梅の三姉妹が館に現れた。〔第8巻第38章「華燭の典」#〕
(松竹梅の三姉妹は黄泉比良坂の戦いで「桃の実」として活躍する)
第9巻
松竹梅の三姉妹(松代姫・竹野姫・梅ケ香姫)は、消息不明の父(第五代天使長の桃上彦)を探して聖地エルサレムを旅立った[54]。梅ケ香姫が夢で、父はウヅの国にいると見た[55]。父の家来だった照彦も後を追って来て従者となる。〔第9巻第1章「都落」#~第2章「エデンの渡」#〕
4人は筑紫の国のヨルの港から三笠丸に乗り、高砂島のテルの国へ向かかった[56]。途中でイザナミ・日の出神が乗った船団とすれ違う。〔第9巻第3章「三笠丸」#~第5章「海上の神姿」#〕
テルの港に着いた。船上で男が、桃上彦の噂話をしている。男は照彦から酒代をせしめ取り、「桃上彦はハルの都で砂漠に埋められて死んでしまった」と教えて消え去った(この男は虎公で第18章に再び登場する)。松竹梅の三姉妹は父が死んだと聞いて悲嘆に暮れる。すると大蛇彦(木花姫命の化身)という男が現れ、自分がウヅの国まで道案内すると申し出る。一行5人でウヅの国へ向かった。道中で大蛇彦が「桃上彦は正鹿山津見と名乗り宣伝使となりウヅの都で五月姫と結婚している」と歌で教える。歌い終わると大蛇彦の姿は消えてしまった。〔第9巻第6章「刹那信心」#~第8章「再生の思」#〕
4人はウヅの都の正鹿山津見の館に到着する。松竹梅の三姉妹は父と再会を遂げた。数日滞在の後、淤縢山津見は珍山彦・駒山彦を伴い常世の国へ向かい旅立つことになった。松竹梅も、黄泉比良坂の戦いに役立ちたいと、お供することを申し出る。照彦も加わり、一行7人(淤縢山津見・珍山彦・駒山彦・松竹梅の三姉妹・照彦)はウヅの都を旅立った。〔第9巻第9章「鴛鴦の衾」#~第12章「鹿島立」#〕
照山峠を下りテルの国の里の近くで一行の足は動かすことが出来なくなった。森林から聞こえる声に導かれ、淤縢山津見・駒山彦・照彦の3人は森の中に入って行った。残った珍山彦・松竹梅の4人も足が動くようになった。珍山彦は「7人も並んで歩くことは華々しく見えるが、それは仇花だ。誠の道の宣伝は一人一人に限る。これから珍山彦が姉妹3人に実地の教訓を施してあげる」と告げる。4人でハラの港に向かう。〔第9巻第13章「訣別の歌」#~第14章「闇の谷底」#〕
一方、淤縢山津見ら3人は山奥に入って行く。照彦に月照彦命が神懸かり説教する。淤縢山津見には「一人でカルの国へ進め」と命じ、駒山彦には「ここで一人で修業しろ」と命じて、照彦は去ってしまった。駒山彦はこの谷間で百日間修業し、立派な宣伝使となり、名を羽山津見神と改め、カルの都へ進んだ。〔第9巻第15章「団子理屈」#~第17章「甦生」#〕
珍山彦と松竹梅の宣伝使一行4人は、ハラの港(テルの国の南方にある)からアタルの港(ヒルの国)に向かうアタル丸に乗った。乗客の熊公と虎公の会話から、三笠丸の船上で照彦から酒代をせしめた男(第9巻第7章「地獄の沙汰」#のエピソード)は虎公だと判明する。松代姫は宣伝使の初陣として虎公を改心させるため宣伝歌を歌う。熊公に大蛇彦が神懸かり虎公に説教する。虎公は改心したが罪が恐ろしくなり、海に身投げした。それを救うため熊公も海に飛び込んだ。船がアタルの港に着くと、波止場に熊公と虎公が立っていた。二人は巨大な亀(琴平別神)に救われたのだった。珍山彦は虎公に「高照山(カルとヒルの国境にある)で禊をして、カルの国で宣伝せよ」と指示し、先へ進んだ。〔第9巻第18章「初陣」#~第22章「晩夏の風」#〕
虎公、熊公、友人の鹿公の3人が高照山の岩窟で修業する。岩窟から大蛇彦の声がして説教する。(虎公は志芸山津見、熊公は石拆神、鹿公は根拆神として、黄泉比良坂の神業で功を立てることになる)〔第9巻第23章「高照山」#~第26章「巴の舞」#〕
(アタルの港~高照山の岩窟のエピソードは夏だが、少し時間が飛んで、次は冬の初めのエピソードになる)
梅ケ香姫は一人でカルの国を宣伝に回り、その後、間の国に入った。間の森で、間の国の酋長・春山彦に出会い、春山彦の館に行くと、姉の松代姫と竹野姫がおり、久しぶりに再会した。間の国はウラル教の鷹取別(大国彦の宰相)の支配下にあり、三五教の松竹梅の宣伝使を捕まえよと命じられていたため、春山彦は三人を匿ったのだった。春山彦もウラル教だったが、松竹梅が乗っていたアタル丸に乗り合わせ、三五教の教えを知り、三五教に改宗したのだった[57]。〔第9巻第27章「月光照梅」#~第28章「窟の邂逅」#〕
春山彦の館に松竹梅の三人の宣伝使を匿っていることが知られてしまい、鷹取別の部下の照山彦と竹山彦(鬼武彦の偽名)が三人を捕まえに館にやって来た。春山彦の娘である月雪花の三姉妹(秋月姫・深雪姫・橘姫)は自分らが松竹梅の身代わりになることを申し出るが、松竹梅はをそれを断り、駕籠に乗せられて常世の国に連れて行かれた。しかしそれは鬼武彦の部下の白狐が化けた偽者[58]で、本物の松竹梅は館にいた。〔第9巻第29章「九人娘」#~第9巻第31章「七人の女」#〕
一人で宣伝の旅をしていた駒山彦が、春山彦の館に現れた。松竹梅は久しぶりに春山彦と再会する。また、照彦が間の森に現れ、春山彦は照彦を(村人たちの手前、捕まえたことにして)館に連れ帰った。松竹梅は久しぶりに照彦と再会する。鷹取別の部下の中依別が、捕まった照彦を引き取りに来た。照彦は駕籠に乗せられ常世の国に連れて行かれた。しかしそれは白狐が化けた偽者で、本物の照彦は館にいた。〔第9巻第32章「一絃琴」#~第36章「偽神懸」#〕
照彦とは仮の名で、月照彦の再来、戸山津見神であると正体を明かす。そこへ鷹取別の部下の遠山別がやって来て、先ほど連行された松竹梅は、月雪花が身代わりとなったのではないか、念のために月雪花も常世の国に連れて行く、と言って月雪花の三姉妹を駕籠に乗せて連れて行った。しかしそれも白狐が化けた偽者で、本物は館にいた。月雪花も宣伝使一行に同道することになり、一行8人(駒山彦・照彦・松竹梅・月雪花)は目の国を目指して旅立った。〔第9巻第37章「凱歌」#〕
第10巻
(第9巻第27~37章は間の国の春山彦の館での物語だが、第10巻第1~8章はそれに対応する常世城での物語になる)
常世城では、大国彦の命令で、広国別が常世神王大国彦を称していた。照山彦・竹山彦(鬼武彦)が、間の国で捕まえた松竹梅の宣伝使を連れて常世城に帰城した。一個の玉が現れ、照山彦・鷹取別・偽常世神王(広国別)にぶつかり、三人は倒れる。竹山彦は松竹梅の宣伝使に三人を介抱するよう命じた。三人は美女に介抱され御機嫌である。以後、松竹梅と竹山彦は偽常世神王に気に入られ、帷幕に参ずることとなった。〔第10巻第1章「常世城門」#~第3章「赤玉出現」#〕
ロッキー山から使者が来て、「松竹梅の宣伝使をロッキー山に送れ」という偽イザナミ(大国姫)の命令を伝えた。偽常世神王はお気に入りの松竹梅を差し出すのが惜しく、月雪花の三姉妹を身代わりにして差し出そうと考え、遠山別に「間の国から月雪花を連れて来い」と命じた。中依別が間の国で捕まえた照彦を護送して帰城したが、照彦の姿が消えてしまった。〔第10巻第4章「鬼鼻団子」#~第5章「狐々怪々」#〕
遠山別が間の国から月雪花の三姉妹を連れて帰城した。奥殿から偽常世神王を始め松竹梅も出て来た。どこからか声がして「一同の者、足下に注意せよ」と笑う。一同はハッと気がつくと、常世城の馬場で泥だらけになっていた。(松竹梅と月雪花の姿は消えてしまった[59])〔第10巻第6章「額の裏」#~第8章「善悪不可解」#〕
(ここまでの季節は冬の初めだが、これ以降は時間が飛び、春になる)
松竹梅の宣伝使は間の国を出た後、目の国を宣伝しながら、常世の国に向かっていた。同道していた照彦・駒山彦・月雪花とはメキシコ峠の山麓で別れていた。松竹梅の三人は目の国の川田の町で淤縢山津見、珍山彦(蚊々虎)に遭遇し、久しぶりに再会した。一行5人はカリガネ半島に上陸する。固虎(照山彦の部下)が率いる部隊が一行を捕まえに現れた。珍山彦は固虎らを帰順させる。固虎が道案内になり一同はロッキー山に向かう。(固虎は後に固山津見という神名を与えられる)〔第10巻第9章「尻藍」#~第11章「狐火」#〕
一行6人はシラ山山脈の頂上で休息した。珍山彦は淤縢山津見に「やはりロッキー山にイザナミ・日の出神がいると信じているのか」と尋ねる。淤縢山津見は「海の竜宮からお伴して海上で別れた時にロッキー山に身を隠すと言われたので信じている」と答える。珍山彦は「神様の経綸には裏もあり表もあり、奥の奥にも奥がある」と教えた。「もしイザナミ・日の出神が偽者だと知ったら、その時あなたはどうする」と尋ねると、淤縢山津見は「その時は直日に見直し聞直し宣り直す覚悟だ」と答えた。珍山彦は「それなら宣伝使として及第点だ」と誉めた。ロッキー山の方から鬨の声が聞こえて来た。一行6人は各自バラバラにロッキー山に向かった。〔第10巻第12章「山上瞰下」#〕
淤縢山津見は固虎を案内者としてロッキー山に向かった。山麓に着くと、魔軍が黄泉島に出陣する最中だった。天教山からイザナギが軍を率いて黄泉比良坂に攻めて来たので、常世の国まで来ないよう、戦いに出るのだった。そこへ珍山彦が松竹梅を連れてやって来た。淤縢山津見は「松竹梅は桃の実の御用に立つために早く黄泉島に渡らねばならないが、敵が出陣してしまった」と嘆く。すると珍山彦は「松竹梅は去年のうちに黄泉島に渡っている」と教える。「ここにいる三人は実は化け物だよ」と言うと、松竹梅の三人は煙となって消えてしまった。珍山彦も消えてしまう。淤縢山津見は「自由行動を取ったため黄泉比良坂の神業に遅れてしまった」と悔しがる。そこへ照彦が現れた。「最早ロッキー山の魔神らは黄泉島に出陣してしまった」と悔しがる淤縢山津見に、照彦は「心配はいらない。神界の経綸によってあなたをここに留め置いたのだ。二人はこれからロッキー城へ進みなさい。自分は常世城に忍び込む」と言うと姿は消えてしまった。〔第10巻第13章「蟹の将軍」#~第14章「松風の音」#〕
【ロッキー城】
淤縢山津見は固虎に固山彦という名を与えた。固虎の案内でロッキー城に入る。淤縢山津見は偽日の出神(大国彦)に「自分は昔あなたに仕えた醜国別である。今は三五教の宣伝使に化けて敵(三五教)の様子を探っている」と嘘をつく。そこへ照彦が蚊々虎の姿に変じ、月雪花の三人を連れて現れ「松竹梅の三人を捕まえた」と嘘をつく。固山彦(固虎)は「昨冬、常世城の広国別(偽常世神王)が送って来た松竹梅の三人は煙のように消えてしまったが、それは広国別の魔術によって現れた悪狐だ。広国別は表面はあなたに随従するように見せかけ、密かに天教山に通じて、あなたの計画を覆す計略を企んでいる」と嘘を教える。大国彦はそれを信じ、逆国別に「広国別を捕まえよ」と命じた。〔第10巻第16章「固門開」#~第17章「乱れ髪」#〕
【常世城】
常世城の広国別を捕まえるため、ロッキー山から逆国別がやって来た。広国別の部下の笠取別が、代理として応対に出たが、逆国別は本物の広国別だと誤解して、笠取別を捕まえてロッキー城に帰って行った。〔第10巻第18章「常世馬場」#~第19章「替玉」#〕
黄泉島へ出陣したはずの竹山彦[60](鬼武彦)が大軍を率いて常世城に帰城した。偽常世神王(広国別)に「ロッキー城で広国別を捕まえようとする情報を探知したので帰城した。逆にこちらからロッキー城を攻めて偽日の出神(大国彦)を捕まえてしまえばいい」と提案する。ロッキー城では常世城から攻めて来るという情報を得て、黄泉島に向かう軍隊の一部を帰城させた。これによって黄泉島の魔軍の兵力は大半を削がれることになった。〔第10巻第20章「還軍」#〕
【黄泉島】
日の出神はイザナギの神勅を奉じ、黄泉島に進軍した。十六神将を部将として、天の鳥船・磐樟船に乗って大軍が黄泉島に進軍した。美山別・照山彦・竹島彦らの部将が率いる魔軍と激戦になる。松竹梅(桃の実)は月雪花や数多の女人を率いて宣伝歌を歌いながら敵の陣中を踊り舞い狂った。魔軍は女神の姿に恍惚として戦場にあることを忘れ戦う力なく平伏した。イザナギは魔軍を言向け和した桃の実の三人に意富加牟豆美神という神名を与えた。〔第10巻第21章「桃の実」#〕
【ロッキー山城、ロッキー城、常世城】
偽イザナミ(大国姫)がいるロッキー山城に、大雷・火雷の二柱が帰城し、黄泉島での魔軍の全敗を報告した。続いて偽桃の実である国玉姫・杵築姫・田糸姫の3人も帰城した。実は大雷の正体は鬼武彦で、火雷の正体は火産霊神で、3人の偽桃の実は白狐が化けた偽者だった(本物の偽桃の実は黄泉比良坂で負傷している[61])。5人は牛のように大きな白狐となり、大国姫らに飛びつこうとした。〔第10巻第22章「混々怪々」#〕
ロッキー山城に、ロッキー城から偽日の出神(大国彦)がやって来て、大国姫に「イザナミと称して黄泉島に出陣し、味方の士気を鼓舞して進軍を追い払え」と命じる。大国姫は直ちに黄泉島に向かった。そこへロッキー城から淤縢山津見・固山彦がやって来て「ロッキー城は常世城の広国別の軍に占領されてしまった」と報告する。大国彦は急いでロッキー城に戻ると、そこには敵も味方も一人もいなかった。淤縢山津見と固山彦はここで「自分らは三五教の宣伝使で、汝らの悪逆無道を懲らすために潜り込んでいた」と告白する。一人になった大国彦は逆上して太刀で二人に襲いかかる。二人は反撃せずに逃げ出した。淤縢山津見は「彼も吾も神の子だ。神の御子同士で傷つけ合うのは親神に対して申し訳ない。あらためて時をうかがい悔い改めさせようと思う」と固山彦に告げる。追いかけてきた大国彦はその仁慈に富んだ言葉を聞いて悔い改めた。3人は常世城に向かう。意外なことに常世城では3人をウローウローと叫んで歓迎した。これよりロッキー城も常世城も十曜の神旗が翻ることとなった。〔第10巻第23章「神の慈愛」#〕
【黄泉島】
黄泉島の魔軍は神軍の言霊の力に戦意喪失していたが、イザナミ(大国姫)が来たことで再び戦意を盛り返した。しかし日の出神が黄泉比良坂で大火球になって飛び回り、魔軍を神光で照らすと、魔軍は化石のように固まってしまった。正鹿山津見が宣伝歌を歌うと、大国姫は改心した。大国姫は黄泉の大神となって幽政を支配することになった。神軍は魔軍を言向け和すことに成功し、天教山に凱旋した。〔第10巻第24章「言向和」#〕
【天教山】
イザナギは青木ケ原で、神軍、魔軍の主な神々に次のように職掌を与えた。(これは古事記の禊身の段に該当する)〔第10巻第25章「木花開」#~第26章「貴の御児」#〕
古事記言霊解
第8巻第6篇「黄泉比良坂」(第39~43章)は古事記の「火神被殺」(第39章・第40章前半)と「黄泉の国」(第40章後半・第41~43章)の段の言霊解になっている。
それによると、イザナミ自らイザナギを追いかけて黄泉比良坂で戦いになったということは「世界全体が一致して日の神の御国へ攻め寄せて来た」ということであり、「是が最后の世界の大峠」であり、「神軍と魔軍との勝敗を決する、天下興亡の一大分水嶺」ということになる。〔第8巻第43章「言霊解五」#〕
予言
『新月の光』によると王仁三郎は「今の太平洋の戦は黄泉比良坂の戦である。南洋の島は陥没した黄泉島の高い所である」[63]と発言しており、黄泉比良坂の戦いのエピソードは、日米戦争(太平洋戦争)を予言したものという側面がある。
脚注
- ↑ 【用例】第10巻第15章「言霊別」#:「この戦は、善悪正邪の諸神人の勝敗の分るる所にして、所謂世界の大峠是なり」、第10巻第24章「言向和」#:「善と悪とを立別る 遠き神代の大峠 黄泉の島の戦ひに」
- ↑ 第8巻第1章「朝日丸」#:「のどかな春の海面を」
- ↑ 第8巻第14章「秘露の邂逅」#:「館の外には長閑な春風吹き渡りゐる」
- ↑ 第8巻第15章「ブラジル峠」#:「春とはいへど赤道直下の酷熱地帯」
- ↑ 第8巻第18章「巴留の関守」#:「折から吹き来る夏の風」
- ↑ 第8巻第27章「沙漠」#:「夏の太陽は又もや煌々と輝き始めたり」
- ↑ 第8巻第30章「珍山峠」#:蚊々虎のセリフ「殊更暑き夏の日に、巴留の都を立出でて」
- ↑ 第8巻第37章「珍山彦」#:正鹿山津見の歌「巴留の都を後にして 汗水垂らす夏の山」
- ↑ 第9巻第1章「都落」#:「春霞靉靆き初めて山々の 花は匂へど百鳥の 声は長閑に歌へども」
- ↑ 第9巻第9章「鴛鴦の衾」#:「三月三日にヱルサレム 館を抜けて三人連れ」
- ↑ 第9巻第3章「三笠丸」#:「更け渡る春の夜の大空は」
- ↑ 第9巻第4章「大足彦」#:甲のセリフ「広い海の平たい面を、春風奴が吹き捲つて」
- ↑ 第9巻第6章「刹那信心」#:「煌々たる夏の太陽は、海面を照らして輝き渡りぬ」
- ↑ 第9巻第9章「鴛鴦の衾」#:「晴れて嬉しき夏の日の」「五月五日の今日の宵」
- ↑ 第9巻第12章「鹿島立」#:「数日滞在の後別れを告げて出でむとする時」
- ↑ 第9巻第18章「初陣」#:「十三夜の月は、満天黒雲に包まれて光を隠し」
- ↑ 第9巻第27章「月光照梅」#:「滴る山野は冬の空 嵐の風に吹かれつつ」、梅ケ香姫のセリフ「はやくも冬の初めとなつたるか」
- ↑ 第9巻第29章「九人娘」#:「十六夜の初冬の月は」
- ↑ 第10巻第6章「額の裏」#:蟹彦のセリフ「何と合点のゆかぬ事だワイ。現に今夜出立した遠山別が、何ほど足が速いと言つても、間の国へは三百里もある。そんな馬鹿な事があつて堪るものか」
- ↑ 第10巻第9章「尻藍」#:「永き春日も早西に傾きて」
- ↑ 第10巻第9章「尻藍」#に「夕暮告ぐる鐘の音は、四人の胸を打ちて秋の夕の寂寥身に迫る」とあり、あたかも今の季節は秋のような書き方だが、「秋の夕のような寂寥が身に迫る」という意味ではないか?
- ↑ 第10巻第11章「狐火」#:「遉に長き春の日も、カリガネ湾の彼方に舂き始めた」
- ↑ 第10巻第12章「山上瞰下」#:「固虎の案内にてシラ山山脈を春風に吹かれながら」、固虎のセリフ「それに就ても合点のゆかぬは、常世城の昨冬の不思議、今此処に御座る三人の宣伝使様と同じ名のついた宣伝使が、間の国から召捕られて常世城に入り、常世神王の大変なお気に入りであつた処、何時の間にやら煙の様になつて消えて了つたのです。そのとき私は門番をやつて居ましたが、照彦と言ふ三五教の宣伝使も召捕られて、これまた不思議や、煙となつて消えて了ひ」
- ↑ 第10巻第18章「常世馬場」#:「春日に照れる常世城」、高彦のセリフ「オイ倉彦、去年の冬だつたかねえ、松、竹、梅の天女のやうな宣伝使がやつて来て(略)月、雪、花と云ふ途方途轍もない別嬪がやつて来て、(略)神王さまを始め、吾々迄が、この馬場だつたね、夜露に曝されて馬鹿を見たことがある。狐の声が、彼方にも此方にもコンコン、クワイクワイ聞えると思へば、駕籠に乗つて来た照彦も、六人の娘も煙になつて消えてしまふなり、怪体な事があつたものだ」
- ↑ 第10巻第2章「天地暗澹」#:「照山彦は従神の固虎に向ひ」
- ↑ 広国別は死んだことになっている。第10巻第13章「蟹の将軍」#:蟹彦のセリフ「常世神王は広国別だよ。一旦死んだと云つて常世の国の一般のものを誑かし、自分が大国彦様と相談の結果、広国別が常世神王になつて居るのだ」
- ↑ 【用例】第8巻第7章「蛸入道」#:清彦(仮日の出神)のセリフ「黄泉比良坂の神業に参加せよ」、猿世彦のセリフ「黄泉比良坂の神業に参加したいものだ」、 第8巻第14章「秘露の邂逅」#:醜国別のセリフ「黄泉比良坂の大神業に参加されよ」、 第9巻第12章「鹿島立」#:松代姫のセリフ「女ながらも黄泉比良坂の戦ひに働かして頂きたう存じます」、 第9巻第16章「蛸釣られ」#:地の文「駒山彦は(略)名を羽山津見神と改め、黄泉比良坂の神業に参加したり」、 第9巻第22章「晩夏の風」#:珍山彦のセリフ(虎公に対して)「黄泉比良坂の御神業に奉仕して下さい」、 第9巻第24章「玉川の滝」#:地の文「志芸山津見の神(=虎公)は(略)黄泉比良坂の神軍に参加し勇名を轟かしたり」、 第9巻第26章「巴の舞」#:地の文「熊公は石拆の神の活動をなし、鹿公は根拆の神の活動をなして、黄泉比良坂の神業に参加し大功を立てたるなり」、 第9巻第30章「救の神」#:地の文「松、竹、梅の三人は(略)黄泉島に無事安着し、黄泉比良坂の神業に参加しぬ」
- ↑ 第10巻第15章「言霊別」#:「窃に天教山に帰らせ給ひ、又もや地教山に身を忍びて」
- ↑ 第10巻第13章「蟹の将軍」#:「常世の国の、眼とも鼻とも喉首とも譬へ方ない大事の黄泉島に、天教山より伊弉諾神が現はれ給うて、この醜けき汚き黄泉国を祓ひ清め、常世の国まで進み来らむと、智仁勇兼備の神将を数多引率して、黄泉比良坂に向つて攻めかけ来り給うたと云ふ事だ。さうなれば常世の国は片顎を取られたやうなもので、滅亡をするのは目のあたりだと云ふので、伊弉冊大神様、日の出神の御大将が此処に数多の戦士を集め、是より常世城の軍隊と合し、黄泉比良坂に進軍せむとさるる間際なのだ」
- ↑ 第10巻第14章「松風の音」#:珍山彦のセリフ「松、竹、梅の三人の宣伝使は去年の中に黄泉島に渡つて居られますよ」
- ↑ 第8巻第18章「巴留の関守」#:高彦(荒熊)のセリフ「この巴留の国には常世神王の勢力侮り難く今また伊弉冊命様が何処からかお出になつて、ロッキー山にお鎮まりなされ、常世神王の勢力ますます旺盛となり」:イザナミがロッキー山に来たことで常世神王の勢力が盛んになったことが語られている。
- ↑ 第10巻第4章「鬼鼻団子」#:遠山別のセリフ「伊弉冊大神、日の出神は、ロッキー山に宮柱太敷き立てウラル教を開き給ふぞ」
- ↑ 第10巻第14章「松風の音」#:松代姫(白狐が化けた偽者)のセリフ「畏れ多くも三五教の守護神、神伊弉冊命様、日の出神様、ロッキー山に現れますと承はり、お跡慕ひて参りました。郷に入つては郷に従へとかや、妾はこれより三五教を棄て、常世神王の奉じ給ふウラル教に帰依いたします」
- ↑ 第10巻第2章「天地暗澹」#:竹山彦のセリフ「聞きしに勝る国色の誉、譬ふるにもの無き天下の美形、永く此城内に留め置かせられ、黄泉比良坂の桃の実として、陣中に遣はし給へば、如何なる英雄豪傑も、美人の一瞥に魂奪はれ魄散り、帰順致すは火を睹るよりも明かならむ。敵の糧を以て敵を制するは、是六韜三略の神算鬼謀、常世神王の御盛運は弥々益々六合に輝き渡り申さむ」
- ↑ 第10巻第8章「善悪不可解」#
- ↑ 第10巻第13章「蟹の将軍」#:蟹彦のセリフ「松、竹、梅の三人の桃の実がなければこの戦ひは勝目がないと、伊弉冊命様の……ドツコイ大国姫命の御命令だ。早く三人を貴様の手にあるなら御目にかけて、抜群の功名をなし、手柄者と謳はれるがよからう」
- ↑ 第10巻第13章「蟹の将軍」#:「花を欺く松、竹、梅の三人に扮したる国玉姫、田糸姫、杵築姫は馬上に跨りながら、桃の実隊として美々しき衣裳を太陽に照されながら、ピカリピカリと進んで来る」
- ↑ 第10巻第14章「松風の音」#:珍山彦のセリフ「松、竹、梅の三人の宣伝使は去年の中に黄泉島に渡つて居られますよ」
- ↑ 第8巻第24章「盲目審神」#:「故に黄泉比良坂に於て伊弉冊命の向ひ立たして事戸を渡したまうたる故事は、真の月界の守り神なる伊弉冊大神にあらず大国姫の化身なりしなり」
- ↑ 第8巻第39章「言霊解一」#:「迦具土神即ち火の文明」、第8巻第40章「言霊解二」#:「火の神いはゆる火力文明のために、世界は黄泉国と化つたのである」
- ↑ 第6巻第29章「泣沢女」#:「ここに火の神現はれて 木草の繁る山や野を 一度にどつと焼速男 世は迦々毘古となり変り 山は火を噴き地は震ひ さも恐ろしき迦具槌の 荒振世とはなりにけり」
- ↑ 第6巻第29章「泣沢女」#:「猛き魔神の勢に 虐げられてやむを得ず 黄泉御国に出でましぬ」、「伊邪那美命の黄泉国、すなはち地中地汐の世界に、地上の世界の混乱せるに驚き玉ひて逃げ帰り玉ひしを」
- ↑ 第6巻第30章「罔象神」#:「茲に伊弉冊命は、女神として地上主宰のその任に堪へざるを慮り黄泉国に隠れ入ります事となつた」
- ↑ 第6巻第31章「襤褸の錦」#:「神伊弉冊命は、地上神人の統御に力尽き給ひて、黄泉国に神避りましたることは」
- ↑ 第10巻第15章「言霊別」#:「茲に伊弉冊命は、この惨状を見るに忍びず、自ら邪神の根源地たる黄泉の国に出でまして」
- ↑ 第8巻第12章「身代り」#:女神のセリフ「高天原に現はれ給ひし神伊弉冊命、黄泉国に出でましてより、黄泉国の穢れを此処に集め給ひ、今まで安楽郷と聞えたる海底の竜宮も、今は殆ど根底の国と成り果てたり」
- ↑ 第7巻第8章「羽衣の松」#:「常世の国に渡りませ ウラルの山に現はれし 魔神は今に常世国 日の出ケ嶽を立出でて 再び御国を襲ひ来る 今や経綸の最中なり」…「ウラルの山に現はれし魔神」とは大台ケ原の岩窟に巣くっていた八岐大蛇のことだと思われる。日の出神が追い出した後、ウラル山に逃げて行った。第7巻第5章「日出ケ嶽」#:「大蛇は数多の部下を伴ひ、黒雲を捲き起し、西方の天を目がけウラルの山指して一目散に逃げ帰りけり」、第8巻第24章「盲目審神」#附言:「常世神王大国彦には八岐の大蛇の悪霊憑依し」
- ↑ 48.0 48.1 第7巻第46章「白日別」#の章末:「此より日の出神は常世の国へ、面那芸司は天教山へ、祝姫は黄金山に向つて進む事となり、三柱は此処に惜しき袂を別ちたりける」
- ↑ 第8巻第4章「烏の妻」#:丁のセリフ「面那芸の宣使さまとかが船に乗つて、筑紫の島から天教山へ行かれる途中に海が荒れて船は暗礁にぶつつかり、メキメキと壊れて了つた。そして客は残らず死んで了つたと云ふことだよ」
- ↑ 第8巻第12章「身代り」#に「海底とは遠嶋の譬也」とある。
- ↑ 第8巻第12章「身代り」#で、日の出神らが海の竜宮を脱出する前に、すでに乙米姫命のセリフの中に「常世の国に身を逃れさせ給へ」と出て来る。
- ↑ 第8巻第25章「火の車」#:蚊々虎のセリフ「俺等と一緒に高白山を攻めた時、爆弾に命中つて脆くも死んだ筈のお前が、何うして此処へやつて来たのだ」
- ↑ 第8巻第30章「珍山峠」#:「高彦は巴留の国の西部の守護職となり」
- ↑ 母はすでに帰幽している。第9巻第1章「都落」#:「母は此世を後にして 黄泉路の旅に出でましぬ」
- ↑ 第9巻第1章「都落」#:「何処の果てか白雲の 靉靆き渡るウヅの国 父の命のましますと 夢に夢みし梅ケ香姫」
- ↑ 第9巻第3章「三笠丸」#:「エデンの河を打渡り(略)山を打越え野を渉り 心も勇む四人連 心つくしのアフリカの ヨルの港に着きにけり」「今や船は帆に風を孕んで智利の国へ向はむとしてゐる」
- ↑ 第9巻第27章「月光照梅」#:丙(春山彦)のセリフ「私も元はウラル教を信じて居りましたが、貴女様一行がてるの国からアタルの港へお渡りになるその船の中に於て、三五教の尊き教理を知り、心私かに信仰致して居りますもの、私の妻も熱心なる三五教の信者でございます」
- ↑ 第9巻第30章「救の神」#:竹山彦のセリフ「吾こそは、大江山に現はれたる鬼武彦の化身にして、竹山彦とは仮の名、松、竹、梅の三人の宣伝使を救はむがために、竹山彦命と偽つて、悪神鷹取別の部下となり、今日あるを前知して、吾部下の白狐、高倉、旭、月日の眷属神を使ひ、身代りを立てたは狐の七化」
- ↑ 第10巻第18章「常世馬場」#:高彦のセリフ「神王さまを始め、吾々迄が、この馬場だつたね、夜露に曝されて馬鹿を見たことがある。狐の声が、彼方にも此方にもコンコン、クワイクワイ聞えると思へば、駕籠に乗つて来た照彦も、六人の娘も煙になつて消えてしまふなり、怪体な事があつたものだ」、第10巻第17章「乱れ髪」#:固山彦のセリフ「昨年常世神王より送り来りし松、竹、梅の三人は、御承知の如く何時とはなしにこの警護厳しき中を煙の如く消え去りしは」
- ↑ 竹山彦が出陣したシーンは描かれていないが、広国別のセリフの中で出陣していたことが分かる。第10巻第19章「替玉」#:偽常世神王(広国別)のセリフ「日頃股肱と頼む照山彦、中依別、鷹取別などの豪傑は、皆出陣して了つて、何とはなしに拍子抜がしたやうだな(略)せめて竹山彦だけなりと残して置けばよかつたに」
- ↑ 第10巻第22章「混々怪々」#:「本当の国玉、杵築、田糸の三人は、比良坂に於て、日の出神の神軍の言霊に悩まされ、肝腎の国玉姫はキツキ目に遇はされて頭を割られ、腕をくじかれ、イタイ、イタイと半死半生、見るも哀れな次第であるぞよ」
- ↑ 62.0 62.1 第10巻第26章「貴の御児」#:「大禍津日神は悪鬼邪霊を監督し或は誅伐を加ふる神となり、八十禍津日神も亦各地に分遣されて、小区域の禍津神を監督し、誅伐を加ふる神となりぬ。(詳しき事は言霊解を読めば解ります)」
- ↑ 『新月の光』0751「黄泉比良坂の戦」