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{{Otheruses|ウラナイ教の黒姫|竹熊の部下の黒姫|黒姫 (竹熊の部下)}}
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{{kakikake}}
 
'''黒姫'''(くろひめ)は、[[霊界物語]]に登場する人物。[[ウラナイ教]]の副教祖。
'''黒姫'''(くろひめ)は、[[霊界物語]]に登場する人物。[[ウラナイ教]]の副教祖。


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* 年齢は50歳代<ref>{{rm|17|7|枯尾花}}:〈岩窟の中に黒姫は 五十路の坂を越え乍ら〉</ref>。[[第24巻]]の時点で54~5歳<ref>{{rm|24|4|一島の女王}}:〈ブランジー(注・高山彦)の妻にクロンバー(注・黒姫)といふ女あり。夫婦何れも五十の坂を四つ五つ越えたる年輩なり。〉</ref>。([[第22巻]]から[[第24巻]]まで'''2年'''経っている<ref>{{rm|24|4|一島の女王}}:クロンバー(黒姫)のセリフ〈大切なる玉の紛失せし為め其所在を探ねむと、竜宮の乙姫様の生宮として今年で殆ど'''満二年'''、残る隈なく探せども今に所在は分らず〉</ref>)
* 年齢は50歳代<ref>{{rm|17|7|枯尾花}}:〈岩窟の中に黒姫は 五十路の坂を越え乍ら〉</ref>。[[第24巻]]の時点で54~5歳<ref>{{rm|24|4|一島の女王}}:〈ブランジー(注・高山彦)の妻にクロンバー(注・黒姫)といふ女あり。夫婦何れも五十の坂を四つ五つ越えたる年輩なり。〉</ref>。([[第22巻]]から[[第24巻]]まで'''2年'''経っている<ref>{{rm|24|4|一島の女王}}:クロンバー(黒姫)のセリフ〈大切なる玉の紛失せし為め其所在を探ねむと、竜宮の乙姫様の生宮として今年で殆ど'''満二年'''、残る隈なく探せども今に所在は分らず〉</ref>)
* 〈黒姫は皺苦茶だらけの垢黒い顔〉〈太い短い首〉<ref>{{rm|17|7|枯尾花}}</ref>。〈真黒々助の黒姫様〉<ref>{{rm|17|7|枯尾花}}:常彦のセリフ</ref>。
* 〈黒姫は皺苦茶だらけの垢黒い顔〉〈太い短い首〉<ref>{{rm|17|7|枯尾花}}</ref>。〈真黒々助の黒姫様〉<ref>{{rm|17|7|枯尾花}}:常彦のセリフ</ref>。
* 自分は「[[竜宮の乙姫]]の[[生宮]]」だと主張している。<ref>{{rm|15|9|薯蕷汁}}:〈この黒姫は竜宮の乙姫の守護だぞ〉</ref> <ref>{{rm09|18|0001|序}}:〈竜宮城の乙姫の憑りたまひし肉の宮と、誇り顔なる黒姫が〉</ref> <ref>{{rm|45|14|三昧経}}:〈黒姫は黒姫で自分こそ竜宮の乙姫の生宮だと固く信じ〉</ref>
== 性格 ==
黒姫は高姫と似たような性格である(→「[[高姫#性格]]」)。しかし異なる部分もある。
* 異性関係は、高姫は男好きで、色香を使って誘惑したり、また誘惑に負けたりする。夫([[美山別]])がいるにもかかわらず、他の男([[蠑螈別]]、[[東助]]、[[妖幻坊]]など)に浮気をする。それに対して黒姫は一途な女で、[[高山彦 (黒姫の夫)|高山彦]]という夫だけを愛し、逃げられるとその後をどこまでも追いかけている。
* 盛んに暴言を吐いたり悪事を行うのは高姫と同じである。しかし黒姫は悪に徹しきれないところがあり、高姫と較べて小胆・小心者である。たとえば[[玉照姫]]を誘拐しようと[[悦子姫]]の館に押しかけ、番人の[[馬公]]を縛り上げる時に、黒姫は小声で〈大神様済みませぬ、赦して下さい。罪も無い馬公を縛ります、これも御道の為ですから、神直日、大直日に見直し、聞直して下さいませ〉と一生懸命に念じた<ref>{{rm|19|3|千騎一騎}}</ref>。また「[[黄金の玉]]」が紛失した時には、ショックで池に飛び込み入水自殺を図っている<ref>{{rm|22|1|玉騒疑}}</ref>。(小心であるが故に恋愛も一途で他の男に心を移せないとも考えられる)


== 家族 ==
== 家族 ==
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* [[高山彦 (黒姫の夫)|高山彦]]:夫。
* [[高山彦 (黒姫の夫)|高山彦]]:夫。
* 富士咲([[玉治別]]):息子。
* 富士咲([[玉治別]]):息子。
== 関連項目 ==
* [[高姫]]
* [[ウラナイ教]]
* [[菖蒲のお花]]:黒姫の再来。[[第64巻]]に登場。
* [[星野悦子]]


== 主なエピソード ==
== 主なエピソード ==
黒姫が登場するのは[[第15巻]]から[[第35巻]]までであり、[[第36巻]]以降は基本的に登場しない。名前が時々出るだけで、あとは[[第72巻]]巻末の「{{rms09|72|9901|特別篇 筑紫潟}}」に、帰幽して[[八衢]]を彷徨う黒姫が登場する。
黒姫が登場するのは[[第15巻]]から[[第35巻]]までであり、[[第36巻]]以降は基本的に登場しない。名前が時々出るだけで、あとは[[第72巻]]巻末の「{{rms09|72|9901|特別篇 筑紫潟}}」に、帰幽して[[八衢]]を彷徨う黒姫が登場する。


黒姫のエピソードを次の4期に区分して説明する。
黒姫のエピソードを次の5つに区分して説明する。


# [[#青年時代]]
# [[#青年時代]]:20歳頃のエピソードが第33巻で回想されている。
# [[#ウラナイ教時代]]
# [[#ウラナイ教時代]]:第15~19巻。
# [[#三五教時代]]
# [[#三五教時代]]:第20~35巻。
# [[#筑紫潟]]
# [[#筑紫島の旅]]:第34~35巻。三五教時代の一部だが量が多いので別項目にした。
# [[#筑紫潟]]:帰幽後のエピソード。第72巻巻末。


=== 青年時代 ===
=== 青年時代 ===
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[[第20巻]]から[[第35巻]]にかけて、黒姫の[[三五教]]時代のエピソードが記されている。
[[第20巻]]から[[第35巻]]にかけて、黒姫の[[三五教]]時代のエピソードが記されている。


【[[第21巻]]】 舞台:[[高春山]]
(1) 【[[第21巻]]】 舞台:[[高春山]]


高姫と黒姫は三五教に帰順した証として、[[高春山]]の[[鷹依姫]]([[アルプス教]]の教主)を言向け和しに行く。二人はアルプス教のアジトがある岩窟に潜入するが捕まってしまう。3ヶ月後、二人を探しに[[綾の聖地]]を旅立った3人の宣伝使([[竜国別]]・[[玉治別]]・[[国依別]])と、途中で一行に加わった[[杢助]]・[[お初]](初稚姫)によって、二人は救出された。〔{{rm|21|1|高春山}}、{{rms|21|18|解決}}〕 →「[[高姫#三五教時代]]」参照
高姫と黒姫は三五教に帰順した証として、[[高春山]]の[[鷹依姫]]([[アルプス教]]の教主)を言向け和しに行く。二人はアルプス教のアジトがある岩窟に潜入するが捕まってしまう。3ヶ月後、二人を探しに[[綾の聖地]]を旅立った3人の宣伝使([[竜国別]]・[[玉治別]]・[[国依別]])と、途中で一行に加わった[[杢助]]・[[お初]](初稚姫)によって、二人は救出された。〔{{rm|21|1|高春山}}、{{rms|21|18|解決}}〕 →「[[高姫#三五教時代]]」参照


【[[第22巻]]】 舞台:[[錦の宮]]
(2) 【[[第22巻]]】 舞台:[[錦の宮]]


黒姫は[[言依別命]]([[錦の宮]]の教主)から「[[黄金の玉]]」の保管を命じられ、四尾山([[世継王山]])の麓の一本松の根元に埋めて隠しておいた。神政成就に必要な大切な玉であり、黒姫は心配で夜になると度々点検に行っていた。ある夜、その玉が無くなっていた。黒姫はショックで入水自殺を図るが、[[テーリスタン]]と[[カーリンス]](この二人は[[鷹依姫]]の部下)に助けられ一命を取り留めた。ところが黒姫は自分の命を救ってくれた二人が玉を盗ったのだろうと疑う。さらに鷹依姫(元アルプス教教主。今は三五教に改宗している)や、その息子の[[竜国別]](三五教の宣伝使)まで疑う。高姫は黒姫が玉を紛失したことの責任を問い詰めた。そこで黒姫・[[鷹依姫]]・[[竜国別]]・[[テーリスタン]]・[[カーリンス]]の5人は玉の行方を探すため旅立つことになった<ref>{{rm|22|4|玉探志}}章末:〈五人は是非なく高姫の宅をスゴスゴと立ち出で錦の宮を遥に拝し、各旅装を整へ世界の各地に向つて玉の捜索に出かけた。〉</ref>。〔{{rm|22|1|玉騒疑}}~{{rms|22|4|玉探志}}〕
黒姫は[[言依別命]]([[錦の宮]]の教主)から「[[黄金の玉]]」の保管を命じられ、四尾山([[世継王山]])の麓の一本松の根元に埋めて隠しておいた。神政成就に必要な大切な玉であり、黒姫は心配で夜になると度々点検に行っていた。ある夜、その玉が無くなっていた。黒姫はショックで入水自殺を図るが、[[テーリスタン]]と[[カーリンス]](この二人は[[鷹依姫]]の部下)に助けられ一命を取り留めた。ところが黒姫は自分の命を救ってくれた二人が玉を盗ったのだろうと疑う。さらに鷹依姫(元アルプス教教主。今は三五教に改宗している)や、その息子の[[竜国別]](三五教の宣伝使)まで疑う。高姫は黒姫が玉を紛失したことの責任を問い詰めた。そこで黒姫・[[鷹依姫]]・[[竜国別]]・[[テーリスタン]]・[[カーリンス]]の5人は玉の行方を探すため旅立つことになった<ref>{{rm|22|4|玉探志}}章末:〈五人は是非なく高姫の宅をスゴスゴと立ち出で錦の宮を遥に拝し、各旅装を整へ世界の各地に向つて玉の捜索に出かけた。〉</ref>。〔{{rm|22|1|玉騒疑}}~{{rms|22|4|玉探志}}〕


【[[第24巻]]】 舞台:[[竜宮島]]
(3) 【[[第24巻]]】 舞台:[[竜宮島]]


黒姫は紛失した「[[黄金の玉]]」を探すため、夫の[[高山彦]]と共に[[竜宮島]]へ渡った<ref>黒姫が竜宮島に渡った理由は守護神(副守?)がそのように囁いたからである。{{rm|24|4|一島の女王}}:黒姫のセリフ〈黄金の玉を紛失し、高姫様に叱り飛ばされ、'''守護神の囁きに依つて'''竜宮の一つ島に隠しあると聞き、此処まで探ねて来たものの〉</ref>。高山彦は「ブランジー」、黒姫は「クロンバー」と名を名乗り、竜宮島の女王・黄竜姫に宰相役として仕えた。竜宮島に渡ってから2年経つ<ref>[[第22巻]]から[[第24巻]]まで'''2年'''経っている。{{rm|24|4|一島の女王}}:クロンバー([[黒姫]])のセリフ〈大切なる玉の紛失せし為め其所在を探ねむと、竜宮の乙姫様の生宮として今年で殆ど'''満二年'''、残る隈なく探せども今に所在は分らず〉</ref>が玉は見つからなかった<ref>{{rm|24|4|一島の女王}}</ref>。高姫・蜈蚣姫の一行が玉探しのため竜宮島にやって来た。高姫と黒姫は2年ぶりに再会する<ref>{{rm|24|10|土人の歓迎}}章末</ref>。竜宮島にどうやら玉はないと判断した高姫・黒姫・高山彦は、船に乗って自転倒島に帰国した。〔{{rm|24|4|一島の女王}}、{{rms|24|10|土人の歓迎}}、{{rms|24|12|暴風一過}}〕
黒姫は紛失した「[[黄金の玉]]」を探すため、夫の[[高山彦]]と共に[[竜宮島]]へ渡った<ref>黒姫が竜宮島に渡った理由は守護神(副守?)がそのように囁いたからである。{{rm|24|4|一島の女王}}:黒姫のセリフ〈黄金の玉を紛失し、高姫様に叱り飛ばされ、'''守護神の囁きに依つて'''竜宮の一つ島に隠しあると聞き、此処まで探ねて来たものの〉</ref>。高山彦は「ブランジー」、黒姫は「クロンバー」と名を名乗り、竜宮島の女王・黄竜姫に宰相役として仕えた。竜宮島に渡ってから2年経つ<ref>[[第22巻]]から[[第24巻]]まで'''2年'''経っている。{{rm|24|4|一島の女王}}:クロンバー([[黒姫]])のセリフ〈大切なる玉の紛失せし為め其所在を探ねむと、竜宮の乙姫様の生宮として今年で殆ど'''満二年'''、残る隈なく探せども今に所在は分らず〉</ref>が玉は見つからなかった<ref>{{rm|24|4|一島の女王}}</ref>。高姫・蜈蚣姫の一行が玉探しのため竜宮島にやって来た。高姫と黒姫は2年ぶりに再会する<ref>{{rm|24|10|土人の歓迎}}章末</ref>。竜宮島にどうやら玉はないと判断した高姫・黒姫・高山彦は、船に乗って自転倒島に帰国した。〔{{rm|24|4|一島の女王}}、{{rms|24|10|土人の歓迎}}、{{rms|24|12|暴風一過}}〕


【[[第25巻]]・[[第26巻]]】 舞台:[[生田の森]]、[[竹生島]]
(4) 【[[第25巻]]・[[第26巻]]】 舞台:[[生田の森]]、[[竹生島]]


[[高姫]]・黒姫・[[高山彦]]は[[生田の森]]の[[杢助館]]で、[[国依別]]の偽の神懸りによる神託を信じて、琵琶湖の[[竹生島]]へ玉探しに向かう。国依別に騙されたこと気づいた3人は責任をなすりつけ合い大喧嘩となる。〔{{rm|25|17|森の囁}}~{{rms|25|18|玉の所在}}、{{rm|26|13|三つ巴}}~{{rms|26|15|諭詩の歌}}〕 →「[[高姫#三五教時代]]」参照
[[高姫]]・黒姫・[[高山彦]]は[[生田の森]]の[[杢助館]]で、[[国依別]]の偽の神懸りによる神託を信じて、琵琶湖の[[竹生島]]へ玉探しに向かう。国依別に騙されたこと気づいた3人は責任をなすりつけ合い大喧嘩となる。〔{{rm|25|17|森の囁}}~{{rms|25|18|玉の所在}}、{{rm|26|13|三つ巴}}~{{rms|26|15|諭詩の歌}}〕 →「[[高姫#三五教時代]]」参照


【[[第27巻]]】 舞台:錦の宮
(5) 【[[第27巻]]】 舞台:錦の宮


5個の「[[麻邇宝珠の玉]]」のうち4個が偽の玉とすり替えられた。[[高山彦]]は支離滅裂なことばかり言う高姫と黒姫に愛想を尽かし、黒姫を離縁して去ってしまう。黒姫は高山彦の行方を探すため、また玉を探すため、[[筑紫の島]]へ旅立った<ref>黒姫が筑紫島へ向かったのは、竜宮島か筑紫島へ行くと高山彦が言っていたため。{{rm|27|7|猫の恋}}:高山彦のセリフ〈これから高山彦はお前と縁を断り、'''竜宮の一つ島か'''、但は'''筑紫の島へ'''玉探しに行くから、これまでの縁と諦めて下さい〉</ref>。 →「[[高姫#三五教時代]]」「[[高山彦 (黒姫の夫)#第27巻、第33~35巻]]」参照
5個の「[[麻邇宝珠の玉]]」のうち4個が偽の玉とすり替えられた。[[高山彦]]は支離滅裂なことばかり言う高姫と黒姫に愛想を尽かし、黒姫を離縁して去ってしまう。黒姫は高山彦の行方を探すため、また玉を探すため、[[筑紫の島]]へ旅立った<ref>黒姫が筑紫島へ向かったのは、竜宮島か筑紫島へ行くと高山彦が言っていたため。{{rm|27|7|猫の恋}}:高山彦のセリフ〈これから高山彦はお前と縁を断り、'''竜宮の一つ島か'''、但は'''筑紫の島へ'''玉探しに行くから、これまでの縁と諦めて下さい〉</ref>。 →「[[高姫#三五教時代]]」「[[高山彦 (黒姫の夫)#第27巻、第33~35巻]]」参照
(6) 【[[第34巻]]・[[第35巻]]】 舞台:[[筑紫島]]
 →「[[#筑紫島の旅]]」
(7) 【[[第33巻]]】 舞台:[[錦の宮]]
(時間的には第34~35巻が先に起きた出来事で、第33巻が後の出来事になる)
[[筑紫島]]から帰国した黒姫は、[[麻邇宝珠]]の赤色の玉の御用に奉仕し、[[三五の玉]]の神業は完了する。その後、高山彦の回顧歌から、自分が35年前に一夜を結んだ男(玉治別の父)が高山彦だったことを知り、嬉し涙にかきくれた<ref>{{rm|33|21|峯の雲}}</ref>。〔{{rm|33|17|感謝の涙}}~{{rm|33|21|峯の雲}}〕 →「[[玉治別]]」「[[高山彦 (黒姫の夫)|高山彦]]」「[[麻邇宝珠]]」参照
=== 筑紫島の旅 ===
第34~35巻は[[筑紫島]]を舞台に黒姫が夫・高山彦を探して旅をする物語である。もう少し細かく言うと、次の3グループの人物を中心としたドラマが交錯して物語が進展して行く。
# 黒姫
# [[房公]]・[[芳公]]
# [[虎公]]・[[お愛]]・[[大蛇の三公]]<ref>虎公とお愛は夫婦。大蛇の三公と最初は敵対しているが、黒姫の活躍により和解し、その後協力して[[スッポンの湖]]の大蛇を言向け和しに行く。</ref>
ここでは黒姫が関わるエピソードだけを説明する。→詳細は「[[第34巻]]」「[[第35巻]]」
【概略】
黒姫は表向きは玉探しを名目にして筑紫島へ渡った。しかし真の目的は消えた夫・高山彦を探すことであった{{rm|34|1|筑紫上陸}}:〈恋しき夫に捨てられし 黒姫今は矢も楯も 堪らぬ様になり果てて 玉の捜索第二とし 夫の所在を探らむと〉、〈麻邇の玉の所在や、黄金の玉の所在を捜索すると云ふは、只単に表面の理由であつて、其実玉に対しては、既に執着心を殆ど脱却してゐたのである〉。
夫探しの旅の過程で、自分が35年前に捨てた息子・[[富士咲]](「[[#青年時代]]」参照)ではないかと思われる人物を見つけた。黒姫はその人物([[熊襲の国]]の神司・[[建国別]])が自分の子供かどうか確認しに行く。しかし人違いであった。(建国別は[[高姫]]の捨て子だったことが帰国後に判明する)
その後、夫の高山彦だと思われる人物が見つかった。彼に会うため[[火の国]]へ行くが、これも別人だった([[高国別]]が「高山彦」と名乗っていた)。そこへ、[[自転倒島]]から黒姫を追ってやって来た[[玉治別]]が現れる。玉治別は、高山彦が実は[[綾の聖地]]にいる<ref>高山彦は綾の聖地の伊勢屋の奥座敷で下女の「虎」と隠れて遊んでいた。→「[[高山彦 (黒姫の夫)#第27巻、第33~35巻]]」参照</ref>ことを黒姫に教えるため、わざわざ筑紫島までやって来たのだった。ここで黒姫は、35年前に捨てた息子は玉治別であったこと知り、再会に喜んだ。
【従者との別れ】
黒姫は日本から3人の従者([[孫公]]、[[房公]]、[[芳公]])を連れて筑紫島へ渡った。何度も船を乗り換え、筑紫島の[[建日の港]]に到着するまで1年ほどかかった<ref>{{rm09|34|0002|総説}}:〈日本海から太平洋に出で、'''一年'''有余の日子を費やして亜弗利加の建日の港に安着し〉</ref> <ref>{{rm|34|1|筑紫上陸}}:〈黒姫が此建日の港に着く迄には幾度となくあちらの島へ寄り、此方の島へ寄り、厳しい捜索をやつて居た為、余程日子を費やしてゐる。殆ど'''一年'''許り掛つた。〉</ref>。3人の従者はその間、黒姫を身近に見てきて、ほとほと愛想が尽きていた。口ばかり達者で、行いが伴わないからだ(たとえば他人の船を盗んだりした)<ref>{{rm|34|1|筑紫上陸}}:〈船は二三回難破し、便宜の方法にて舟を買つたり、拾つたりし乍ら、漸くここへ辿り着いたのである。其間には随分背中に腹の替へられないやうな憂目に遭ひ天則違反的行動をも続け、島に繋ぎありし、何人かの舟をソツと失敬して、乗つて来た事もあるのであつた〉</ref>。
山道を登る途中、孫公が尖った石に腰を強く打って人事不省になってしまった。しかし黒姫は冷ややかな態度で、「黒姫の言うことに口答えし、長上を侮辱して来た天罰です。気味のよいことだ」とニヤリと笑うだけで助けようとしなかった。房公が鎮魂をかけて孫公が息を吹き返すと、「この黒姫の鎮魂のお蔭で甦ったのだよ」と他人の手柄を横取りするのだった。〔{{rm|34|2|孫甦}}〕
一行はハチの大群に追いかけられ、一気に山を駆け登った。ようやく一息ついた所に清水が湧き出ていた。それを飲んだとき黒姫は、房公と芳公(孫公はどこかに消えてしまった)の2人が先に水を飲んだことで立腹し「長幼 序あり。なぜ長上の黒姫に先に水を飲ませないで、若い者が先に飲むのか」と怒り出した。〔{{rm|34|6|蜂の巣}}〕
房公と芳公がしゃがんだまま立ち上がれなくなってしまう。黒姫は2人がワザとやっているんだと思い、腹を立てて1人で先へ行ってしまう。2人が動けなくなったのは神の仕組によるものだった。〔{{rm|34|8|暴風雨}}〕
ここから黒姫の一人旅が始まる。黒姫は神から4つの試練を受ける。
【①サルに冠り物を取られる】 〔{{rm|34|15|手長猿}}〕
黒姫は、[[熊襲の国]]の神司・[[建国別]]は自分が捨てた息子ではないかと思っていたが、人違いだと判明し、落胆して、夫の高山彦と思われる人物がいる[[火の国]]へ向かってトボトボ歩いていた。
川の畔で休んでいると、そこに大きな樫の木が1~2本立っており、枝に十数匹の手長猿がいる。すると枝にぶら下がったままサルがいたずらをして来て「笠」(蓑笠?)を取られてしまった。この笠は〈宣伝使のレツテルとも云ふべき大切な冠り物〉であった。
樫の木のサルたちはあちこちから集まって来て、集団で黒姫の頭上からイタズラをする。小便の雨を降らしたり、糞を垂れたり、樫の実を投げたり…黒姫は逃げることも出来ずに立ちすくんでいた。
しばらく見ているうちにサルの習性──人マネをするという習性が分かって来た。そこで黒姫はトンと飛び上がって地面に大の字になって寝転がると、サルもマネして樹上で飛び上がり、大の字になった途端、地面に雪崩のように落ちてしまった。
サルたちはキャーキャー悲鳴を上げて逃げて行った。冠り物は無事に戻って来た。
【②朽ちた丸木橋を渡り、生き埋めの三人を救出する】 〔{{rm|34|19|生命の親}}〕
[[火の国]]へ進む黒姫の前に、深い谷川が現れた。一本の丸木橋が架かっているが、端の方が7~8分腐っており、無事に渡れるかどうか分からない。どうしたらいいか迷っていると、3尺(約91センチ)ほどの小人の童子が現れて、迷いを深めるようなことを言う。黒姫はどうしたらいいか分からず涙を落としてうなだれると、どこからか[[玉治別]]の宣伝歌が聞こえて来た。〈汝の心に信仰の 誠の花の咲くならば 易く渡らむ神の橋〉という宣伝歌に黒姫は元気づけられ、思い切って足を踏み出すと、無事に橋を渡ることが出来た。
黒姫が神へ感謝祈願の祝詞を上げていると、お梅という14~5歳の少女が泣きながら現れた。事情を聞くと、姉の[[お愛]](愛子姫)と二人の男([[孫公]]、[[兼公]])が、「[[大蛇の三公]]」という極道者によって土の中に埋められてしまったという。
黒姫は急いでその埋められたという場所に駆けつけると、埋めた上に大きな石が積んであり、いくら押しても突いてもビクともしない。なす術もなく、涙をタラタラ流しながら一生懸命に天津祝詞を唱えていると、3尺の童子が8人どこからか現れて、巨大な石を軽々と取り除くと、煙となって消え去った。
黒姫は神助に感謝し、汗みどろになってお愛たち3人を掘り出した。3人は命の恩人の黒姫に涙を流して感謝した。
【③大蛇の三公と和解する】 〔{{rm|35|5|案外}}〕
黒姫は、土中から救出した3人と、[[お愛]]の夫の[[虎公]](虎若彦)らを率いて、犯人の[[三公]]の館に乗り込んだ。三公の館では子分を集めて慰労会が開かれていた。殺したはずの3人が現れたので幽霊が出たと言って大騒ぎになる。三公は神のお告げによりこのことを察知していたため、威儀を正して黒姫たちを出迎えた。黒姫の一行も三五教の教えを遵奉していたおかげで、今までの恨みを流し、両者とも和気あいあいとして酒を酌み交わし、和解の宴会となった。
【④キツネの出産を助ける】 〔{{rm|35|19|狐の出産}}〕
三公や虎公、お愛たちは「[[スッポンの湖]]」の大蛇を言向け和しに行くが、黒姫はここで別れて、[[徳公]]・[[久公]]の2人の従者を連れて火の国へ進んだ。
山の中で、旅の夫婦と出会い、身重の妻が産気づいて道端で苦しんでいるので宣伝使の神力で安産をさしてやって下さい、と頼まれた。黒姫は承知して天津祝詞を奏上し、天の数歌を歌い上げ、一生懸命祈願を凝らすと、妊婦から4人の子供が無事に産まれて来た。
夫婦は黒姫に礼を言うと、真っ白なキツネの姿に変わり、4匹の子ギツネを連れて森の中に姿を隠した。
徳公と久公は「何だ、キツネに騙されたのか」と苦笑するが、黒姫は「神様のお道に分け隔てはありません。人間はもちろん、鳥、獣、虫けらに至るまで助けて行くのが、三五教の教えです」と二人を諭した。
【捨てた息子との再会】 〔{{rm|35|24|歓喜の涙}}〕
黒姫は[[火の国]]の都の高山彦の館に辿り着いた。しかし高山彦は自分の夫ではなく、別人だった([[高国別]]=[[活津彦根神]])。
黒姫はガッカリする。そこへ[[玉治別]]が現れ、夫の高山彦は[[綾の聖地]]にいるということを聞かされる。そして玉治別の背中に富士山マークの白いアザがあるということを知り、玉治別が、自分が35年前に捨てた息子の[[富士咲]]だということが判明する。


=== 筑紫潟 ===
=== 筑紫潟 ===
黒姫は聖地において慢心した結果、神罰を蒙って百日間苦しんだ末に帰幽した。黒姫(の精霊)は[[八衢]]を彷徨う。そこへ[[高姫]]が現れる(高姫はまだ死んでいない。その精霊だけ)。黒姫は自分は死んでいない、まだ生きていると信じているのだが、高姫は黒姫が死んだと言っているため、二人は口論となる。黒姫は高姫を「発狂者」扱いして批難する。そこへ黒姫の夫・[[高山彦]]も現れた(高山彦もまだ死んでいない。その精霊だけ)。黒姫は高山彦を見て大喜び。しかし高山彦も黒姫が死んだというのでケンカとなる。逃げる高山彦を黒姫は追いかける。そこへ天から天津祝詞の声が聞こえてきて、エンゼルが下って来た。黒姫の姿は消えてしまい、部屋の中で高姫が黒姫の霊璽を前に祝詞を唱えていた。高山彦は夢から覚め、高姫の親切を感謝しながら、[[小北山]]へ進んで行った。
* {{rms09|72|9901|筑紫潟}}は霊界物語[[第72巻]]巻末に「特別篇」として収録されている。昭和2年(1927年)10月19日に口述され、『[[神の国 (1921)|神の国]]』同年11月号に「霊界物語特別篇」として発表された。戦前発行された霊界物語(第72巻初版は昭和4年4月発行)には収録されていない。戦後の版<ref>[[普及版]]、[[校定版]]、[[八幡書店版]]、[[愛善世界社版]]で確認。それ以外の版は未確認。</ref>の、第72巻の巻末に収録された。
* 黒姫の現界的顕現とされる[[星田悦子]]は昭和2年(1927年)6月23日に帰幽(享年59歳)した。同年10月1日に百日祭が執行され、その19日後(10月19日)に口述されている。
* 「筑紫潟」とは九州の有明海の古称である。口述地の長崎県島原は有明海に面している。
== 関連項目 ==
* [[高姫]]
* [[ウラナイ教]]
* [[菖蒲のお花]]:黒姫の再来。[[第64巻]]に登場。
* [[星田悦子]]


== 脚注 ==
== 脚注 ==