黄金水の十二個の玉
名称
霊界物語に「黄金水の十二個の玉」という名称は出て来ない。便宜的な呼び方である。霊界物語では次のように様々な呼び方をされており、固有名詞は存在しない。
- 「黄金水の精より成り出でたる十二個の玉」[1]
- 「黄金水の精より出でたる十二の宝玉」[2]
- 「竜宮の黄金水の玉」[3]
- 「黄金水より出たる十二の玉」[4]
- 「十二個の黄金水の玉」[5]
- 「黄金水の霊より現はれ出でたる十二個の玉」[6]
個々の玉については、次のように呼ばれている。
概要
主なエピソード
玉の誕生
第1巻第38章「黄金水の精」#で黄金水の十二個の玉が誕生している。
シオン山から竜宮城へ「顕国の御玉」が運ばれ、三重の金殿に秘蔵された。玉と一緒にシオンの滝の清泉が黄金造りの器に入れて運ばれ、真奈井に注ぎ込まれた。これより真奈井の水は「黄金水」と呼ばれるようになった。
顕国の御玉が竜宮城に到着すると共に、三方から黒煙が天に立ち昇り、竜宮城は焼け落ちようとする勢いだったが、真奈井から黄金水が天に噴き上がり、大雨となって降り下り、猛火を鎮定した。
三重の金殿は顕国の御玉によって光り輝き、天地六合を照らした。
黄金水はにわかに金色に変じ、水の精は十二個の美しい玉となって空に舞い上がり、種々の色に変じて、再び地上に落下した。竜宮城の神司12人が争ってこの玉を拾い、各自に珍蔵することとなった。
12人の神司の名と、入手した玉の色、玉をめぐるエピソードが記された章は次の通り。
- 田依彦/白色/第39章「白玉の行衛」#
- 玉彦/黒色/第40章「黒玉の行衛」#
- 芳彦/紫色/第41章「八尋殿の酒宴(一)」#~第42章「八尋殿の酒宴(二)」#
- 神彦/黄色/同上
- 倉高/色不明/同上
- 杉生彦/色不明/同上
- 猿彦/色不明/同上
- 鶴若/赤色/第43章「丹頂の鶴」#
- 亀若/緑色/第44章「緑毛の亀」#
- 時彦/黄金色/第45章「黄玉の行衛」#
- 森鷹彦/色不明/第46章「一島の一松」#
- 高杉別/瑠璃光色[9]/同上
この12個の玉はおのおの特徴を備え、神変不可思議の神力を持つ。しかし12個のうち1個不足しても何の用もなさない。〔以上、第1巻第38章「黄金水の精」#〕
【備考】
- 森鷹彦と高杉別が保管する玉以外の10個は全て竹熊に奪われてしまう。(下の項を参照)
- 森鷹彦は玉を大八洲彦命に献上し、高杉別は玉を地中海の一つ島に隠し、それぞれ偽玉を竹熊に献上する。(下の項を参照)
- 紫の玉は、竹熊の死に際して自転倒島へ落ち、アルプス教の御神体となる(→「三つの玉」)。(下の項を参照)
- 田依彦、芳彦、時彦の3人は第7巻に登場し、竜宮島の司となる。
- 森鷹彦と高杉別の2人は、シオンの滝から清泉を運んだ2人である。[10]
- 鶴若は第2巻で、「太白星の十二個の玉」が生代姫命から与えられるきっかけを作る。
玉の奪取
悪神の竹熊一派は竜宮城の三重の金殿に鎮座する「顕国の御玉」を無力化させるための作戦として、まずこの12個の玉を奪い取ることにした。〔第1巻第38章「黄金水の精」#〕
竹熊一派は、色仕掛け、裏切り、功名心をくすぐったり、自尊心を砕いたり、あらゆる奸佞邪智をつくして玉を奪い取ろうと謀る。〔第39~46章〕
まず田依彦(白色の玉)と玉彦(黒色の玉)からは奪取した〔第39~40章〕が、残りまだ10個もあるのでこれを一挙に手に入れようとたくらむ。
八尋殿で酒宴を開き、そこで芳彦(紫の玉)、神彦(黄色の玉)、倉高、杉生彦、猿彦(この3人の玉の色は不明)から合わせて5つの玉を奪い取った。〔第41~42章〕
その後、鶴若(赤玉)、亀若(緑の玉)、時彦(黄金の玉)から奪い〔第43~45章〕、これで12個のうち10個まで手に入れた。
残り2個の玉を持つ高杉別、森鷹彦はもはや竹熊には勝てぬと観念して、自分から玉を竹熊に献納する。竹熊は小躍りして喜ぶが、しかしこの玉は実は偽の玉だった。2人は奪われることを恐れ、機先を制して偽玉を竹熊に献じたのである。本物の玉は、森鷹彦は大八洲彦命に献納した。高杉別は地中海の一つ島に岩窟を掘り玉(瑠璃光色の玉[9])を深く納め、その上に松を植えて印とし、従臣の杉高を島の守護神に任じた。〔第46章「一島の一松」#〕
竹熊はシオン山での大八州彦命との決戦で滅亡する。竹熊の血は溢れて湖水となった。これを死海と呼ぶ。竹熊が所持していた12個の玉(うち2個は偽玉)は死海に沈んでしまった。玉は歳月を経て雲気となって舞い上り、世界各地に墜落して邪気を散布し、あらゆる生物を苦しめることになった。黄金水から生まれた宝玉も、竹熊の血に汚されて悪玉に変化してしまったのである。この玉の散布した地は最も国魂の悪しき国土である。〔第1巻第50章「死海の出現」#〕
瑠璃光色の玉
第5巻第32章「波瀾重畳」#~第33章「暗夜の光明」#で瑠璃光色の玉の後日談が記されている。
国祖隠退後の、大峠が近づく世界で──地中海(瀬戸の海)を西南に向かって進む船(船名不明)が夜、颶風に遭う。その時前方から瑠璃光色の玉の光が放射した。船体をそちらへ向け、船客は一つ島(サルヂニア島)に避難する。
第5巻第25~26章で天教山が爆発した時、天に向かって数多の星光が打ち上げられ世界各地に落下した[11]。そのうち11個の宝玉が瀬戸の海に落下し、数多の海神は海底に潜って探し求め、杉高に奉った。これによりこの島に、黄金水の瑠璃光色の玉と合わせて12個の玉が揃った(→「天教山の十二個の玉」)。12個の玉は地教山の高照姫命のもとに送り届けられた。
紫の玉
死海へ落ちた黄金水の玉の中で、紫の玉だけは汚されずに空に飛んで自転倒島へ落ちた。それを鷹依姫が手に入れ、その玉を御神体としてアルプス教を興した。〔第21巻第18章「解決」#〕
脚注
- ↑ 第1巻第38章「黄金水の精」#
- ↑ 第1巻第39章「白玉の行衛」#
- ↑ 第1巻第42章「八尋殿の酒宴(二)」#
- ↑ 第2巻第39章「太白星の玉」#
- ↑ 第3巻第42章「常世会議」#
- ↑ 第5巻第33章「暗夜の光明」#
- ↑ 第1巻第40章「黒玉の行衛」#
- ↑ 第1巻第43章「丹頂の鶴」#
- ↑ 9.0 9.1 この玉が瑠璃光色だということは第5巻第32章「波瀾重畳」#~第33章「暗夜の光明」#に記されている。
- ↑ 第1巻第38章「黄金水の精」#:「高杉別、森鷹彦は大神の命を奉じ、黄金造の器にシオンの滝の清泉を盛り、御輿の前後に扈従し目出度く帰城したまひ」
- ↑ 第5巻第26章「艮坤の二霊」#:「轟然たる大音響とともに突然爆発したる天教山の頂上より、天に向つて打ち上げられたる数多の星光は、世界の各地にそれぞれ落下した」