一厘の仕組・一輪の秘密
一厘の仕組(いちりんのしぐみ)または一輪の秘密(いちりんのひみつ)とは、神政成就の経綸において、最後の要となる特別な計画で、神(国祖)しか知らない秘密の仕組みのこと。悪神が神政成就を阻止するため必死に妨害しても、九分九厘のところでこの仕掛けが発動して、悪の謀計は引っくり返され、神が統治するミロクの世が実現する。
本項では一括して「一厘の仕組/一輪の秘密」と表記する。
概要
- 「一厘の仕組/一輪の秘密」は大本以前の宗教等では使われていない、大本独自の用語である。
- 大本系の宗教等で、この言葉や概念が流用されている[1]。
- この言葉は大本神諭に表れた言葉である。その後の伊都能売神諭や霊界物語でも使われている。
- 「いちりん」と、「しぐみ」または「ひみつ」の組み合わせで、いろいろな表現がされる。「いちりん」は「一厘」「一輪」、「しぐみ」は「仕組」「経綸」、「ひみつ」は「秘密」という漢字が主に宛てられ、「一厘の仕組」「一厘の経綸」「一厘の秘密」「一輪の仕組」「一輪の経綸」「一輪の秘密」等と表記される。
- 「一厘の仕組」とか「一輪の秘密」など、言い方や表記が異なっていても、意味が異なるわけではない。霊界物語第1巻第35章・第36章では、「一輪の秘密」と「一厘の仕組」のそれぞれの意味が説明されている(後述)が、霊界物語のそれ以外の箇所や、大本神諭などでは、それらは特に使い分けされていない。
- 略して「一厘」とか「一輪」と呼ばれる場合もある。【例】〈地の泥海を固め締るには、竜宮の音姫殿一輪の御手伝で〉[2]:この「一輪の御手伝」とは「一輪の仕組の御手伝」という意味。
用例・概念
- 大本神諭での初出:〈出口直の血筋をねろうて、悪神の頭《かしら》が掛《かか》りて来て、大本の一厘の仕組を横奪《よこどり》に来るぞよ。〉〔大本神諭 明治31年旧7月16日#〕
- 霊界物語第1巻第35章・第36章の章題になっている。第35章によると、世の終末に世界改造のために国祖が「三個の宝珠」を使用する神業が「一輪の秘密」である。三個の宝珠は国祖が大八洲彦命らに命じて冠島・沓島に隠させた(第35章)。第36章によると、国祖は彼らにも秘密にして珠の体(形骸)だけを両島に隠し、珠の精霊はシナイ山の山頂に隠した。これは国祖の水も漏らさぬ経綸であって、それが「一厘の仕組」[3]である。
- 第1巻第35章「一輪の秘密」#:三個の宝珠は〈いづれも世界の終末に際し、世界改造のため大神の御使用になる珍の御宝である。しかして之を使用さるる御神業がすなはち一輪の秘密である。〉
- 第1巻第36章「一輪の仕組」#:〈国常立尊は邪神のために、三個の神宝を奪取せられむことを遠く慮りたまひ、周到なる注意のもとにこれを竜宮島および鬼門島に秘したまうた。そして尚も注意を加へられ大八洲彦命、金勝要神、海原彦神、国の御柱神、豊玉姫神、玉依姫神たちにも極秘にして、その三個の珠の体のみを両島に納めておき、肝腎の珠の精霊をシナイ山の山頂へ、何神にも知らしめずして秘し置かれた。これは大神の深甚なる水も洩らさぬ御経綸であつて、一厘の仕組とあるのはこのことを指したまへる神示である。〉
【誰も知らない仕組】
- 〈世の立替のあるといふ事は、何の神柱にも判りて居れど、何うしたら立替が出来るといふ事は、判りて居らんぞよ。九分九厘までは知らしてあるが、モウ一厘の肝心の事は、判りて居らんぞよ。〉〔大本神諭 明治25年旧1月(日不明)#〕
- 〈九分九厘まで行た所で一厘の経綸は人民には解らず、神は今の今まで肝心の一厘の仕組はドンナ結構な身魂にも明かして知らすと云ふ訳には行かんから、余程胴を据えて居らん事には、一厘の所に成りてから神徳を落す者が出来るぞよ。〉〔伊都能売神諭 大正8年1月2日#〕
- 〈此の一輪の経綸を知りたものは、天地の元の誠の祖神より外には無いから〉〔伊都能売神諭 大正8年1月21日#〕
- 〈一厘の仕組のあるということは言ってはならぬ。世間並に言っておればよいのである。こうならぬとお仕組は成就せぬ。〉〔『新月の光』1104「世間並に言え」〕
【最後のトドメの仕組】
【大本以外では知らしていない】
【一厘は日本にある】
- 〈悪の巧みで茲までは、トントン拍子に来たなれど、日本の国には一輪の経綸が為てあるぞよ。〉〔大本神諭 大正3年旧9月17日#〕
- 〈それに就而は日本の神国に一厘の経綸が致してある事が判らんから、今に行きも戻りも成らん事が出来いたして、明いた口が閉まらぬ如うになりて、外国の守護神がアフンと致して、逆立ちに成りて、日本へ御謝罪を致す如うの仕組が世の元から致してあるから〉〔大本神諭 明治43年旧4月15日#〕
- 〈日本の霊の本には、一厘の秘密が致して在りて、世界の人民の判らん、智慧や学で考へても、悪でも何でも出来ん事が在るぞよ。〉〔大本神諭 大正4年旧11月6日#〕
【一厘は大本にある】
【一厘とは王仁三郎あるいは天皇のこと】
- 〈昔から神が経綸致した一厘の御ン種で、三千世界を開いて見せるぞよ。〉〔大本神諭 明治32年旧2月(日不明)#〕
- 〈天地の元の一輪の御血統の御手伝をなさる守護神を、三段に分けてあるから〉〔大本神諭 大正6年旧9月30日#〕
【一厘とは言霊のこと】
- 〈日本の神国には九分九厘行た処で一厘の秘密(火水也言霊也)が有る手の掌を覆すと云ふ事が書いて在ろうがな。外国の悪神を帰順させて了ふぞよ。〉〔大本神諭 明治43年旧8月7日#〕
- 〈一厘の仕組とは言霊であって、これを呼び起こすのである。〉〔『新月の光』0375「一厘の仕組は言霊」〕
悪用
悪神は「一厘の仕組/一輪の秘密」を悪用している。「自分はその秘密を知っている」と吹聴して自分の権威付けに利用し、信者を集めたり、支配したりするために利用している。
本来、神しか知らない秘密を自分が知っているということは、自分は神の代理人(救世主)あるいは神そのものだと宣言していることになる。
高姫・黒姫による悪用例
高姫・黒姫は「一厘の仕組/一輪の秘密」を知っていると自慢し、威張っている(本当のことは知らない。知っていると思い込んでいる)。
- 高姫〈根本のトコトンの一厘の仕組は、此高姫が扇の要を握つて居りますれば〉〈サアサア神政成就、日本魂の根本の一厘の仕組を聴かして上げよう………エヘン……オホン……〉〔第16巻第8章「衣懸松」#〕
- 黒姫〈誠の経綸が聞きたければ私について御座れ、三千年の長い苦労艱難の一厘の経綸を、信仰次第に依つて聞かして上げぬ事もない〉〔第18巻第6章「真か偽か」#〕
- 高姫〈ウラナイ教の神の道 唯一厘の秘密をば グツと握つた高姫が 仕組の奥の蓋あけて(略)唯一厘の御仕組 天晴成就させて見せう〉〔第18巻第15章「遠来の客」#〕
- 高姫〈弥勒様の因縁を知つて居ますか、一厘の仕組が分りますか、エー、よもや解りますまい。ヘン、一厘の仕組も分らぬ癖に偉さうに云ふものぢやないわ〉〔第57巻第12章「三狂」#〕
大本での悪用例
現実の大本教団でも、大本神諭に表れた「一厘の仕組/一輪の秘密」は悪用されている。王仁三郎在世中から大本内あるいは大本周辺で、その秘密を知っているとか、その一厘とは自分のことだ(つまり自分が救世主だ)等と吹聴して、信者を迷わす者はたびたびいた。
王仁三郎は歌日記で〈一厘の経綸はすなはち吾なりと人三化七信者をあざむく〉〔出口王仁三郎歌集『言華』昭和7年3月号#〕と嘆いている。
第二次大本事件では、いわゆる「一厘組」と呼ばれる一部の異端信者の歪んだ信仰が争点の一つとなった。彼らは「一厘の仕組/一輪の秘密」を独善的に解釈していた。[4] [5]