淤縢山津見
淤縢山津見(おどやまづみ)は、霊界物語に登場する人物。もともとは大自在天大国彦の宰相[1]で醜国別(しこくにわけ)という名前だったが、大洪水後に正鹿山津見と名を変え海の竜宮の門番になっていたところを日の出神に救われ、三五教の宣伝使になる。黄泉比良坂の戦いではロッキー城に入り、大国彦(偽の日の出神)を言向け和した。
目次
概要
主なエピソード
大洪水前には全く登場しない。常世会議の大自在天大国彦側の出席者の一人として名前が記されているだけである。[2]
醜国別は大国彦の命令で聖地エルサレムの宮(国祖の宮殿のことか?)を破壊したため大罪人となり、根底の国に墜落するとき、国祖の慈悲で救われ、海の竜宮の門番となった。(これは国祖隠退前の出来事だが第4巻までには描かれておらず、第8巻のセリフの中で語られているだけである)[3]
第8巻
日の出神が大きな亀(琴平別神)に乗って海の竜宮に現れ、邪神に攻撃されていた伊弉冊命や、それを救おうとしていた面那芸司、門番の淤縢山津見と正鹿山津見を、海の竜宮から救出する。〔第8巻第12章「身代り」#〕
日の出神は淤縢山津見と正鹿山津見を伴い、ヒルの都で清彦と蚊々虎の前に現れる。(蚊々虎は醜国別時代の部下)〔第8巻第14章「秘露の邂逅」#〕
その後、淤縢山津見は蚊々虎を連れてブラジル峠を越えてハルの国へ向かう。山頂で蚊々虎に神懸かりして邪神が取り憑くが、淤縢山津見はその邪神を追い払う。〔第8巻第15章「ブラジル峠」#~第16章「霊縛」#〕
ハルの国は鷹取別(大国彦の宰相)が支配しており、その部下の荒熊らが関所を守り、淤縢山津見一行が通るのを邪魔した。谷に落ちた荒熊を淤縢山津見が救ったことで、荒熊は改心して帰順する。荒熊はかつて醜国別の部下だった高彦だった。淤縢山津見は高彦の案内でハルの都へ進む。〔第8巻第17章「敵味方」#~第19章「刹那心」#〕
滝の村で五月姫と出会う。五月姫はハルの国の東半分を治める闇山津見の娘で、その館に招かれた。淤縢山津見は闇山津見に「黄泉の国に行かれたはずの伊弉冊命がロッキー山に現れたということを鷹取別から聞いたがその真偽は?」と尋ねられる。蚊々虎が神懸かりして「ロッキー山に現れた伊弉冊命は大国姫が化けた偽者だ」と言うが、淤縢山津見はその神懸かりを否定して「自分は海の竜宮からお伴して来たが、たしかに日の出神は伊弉冊命とロッキー山に行くと言っていた」と答える。(これは黄泉比良坂の戦いへの伏線)〔第8巻第20章「張子の虎」#~第24章「盲目審神」#〕
駒山彦も合流し、一行5人(淤縢山津見、蚊々虎、高彦、駒山彦、五月姫)は館を出てハルの都へ向かって旅立った。一行が都に入ると、鷹取別たちは幾千もの天の磐樟船や鳥船に乗って逃げて行った。淤縢山津見は高彦(荒熊)をハルの国の西部の守護職[4]に任命し、原山津見という名を与えた。〔第8巻第25章「火の車」#~第29章「原山祇」#〕
一行4人(淤縢山津見、蚊々虎、駒山彦、五月姫)はウヅの国へ向って旅立った。珍山峠の谷間の温泉で倒れていた正鹿山津見を助け出し、5人でウヅの都へ進む。大蛇峠に横たわっていた大蛇を蚊々虎が言向け和し、大蛇の背に乗って一気に山を下る。〔第8巻第30章「珍山峠」#~第36章「大蛇の背」#〕
一行はウヅの都の正鹿山津見の館に入る。蚊々虎(珍山彦に改名)の取りなしで正鹿山津見と五月姫は結婚することになった。結婚式の直会の最中に、聖地エルサレムから松竹梅の三姉妹が父・正鹿山津見を訪ねてやって来た。父子は再会を遂げる。〔第8巻第37章「珍山彦」#~第38章「華燭の典」#、第9巻第9章「鴛鴦の衾」#〕
第9巻
淤縢山津見は正鹿山津見の館に数日滞在した後、珍山彦(蚊々虎から改名)と駒山彦を伴い常世の国へ向けて旅立つ。松竹梅の三姉妹も宣伝使になることを決意し、淤縢山津見に同道することになった。照彦(三姉妹の侍者)も同道する。〔第9巻第12章「鹿島立」#~第13章「訣別の歌」#〕
淤縢山津見一行7人(淤縢山津見、珍山彦、駒山彦、松竹梅の三姉妹、照彦)は照山峠を下り、テルの国の里近くで足が固まり動けなくなる。淤縢山津見・駒山彦・照彦の3人は声に導かれて自然に足が動いて行った。ここから珍山彦・松竹梅の4人と別行動になる。3人は声に引きつけられ山奥に連れて行かれる。照彦に月照彦命が懸かり、説教する。月照彦命は淤縢山津見に、一人でカルの国へ行くよう命じた。〔第9巻第14章「闇の谷底」#~第15章「団子理屈」#〕
第10巻
淤縢山津見はカルの国を越え、常世の国へ進んでいた。目の国の川田の町の十字街で、松竹梅の宣伝使と再会する。また珍山彦(蚊々虎)とも再会する。5人はカリガネ半島に上陸した。5人を捕まえに現れた固虎(大国彦の部下)を帰順させ、道案内にしてロッキー山に向かって進む。〔第10巻第9章「尻藍」#~第11章「狐火」#〕
シラ山山脈の頂上で、珍山彦は淤縢山津見に「やはりロッキー山に伊弉冊命と日の出神がいると信じているか?」と尋ねる。淤縢山津見は信じていると答えるが、珍山彦は「神様の御経綸は裏もあり表もある」「もし偽者だったら、腹を立てることはないか?」と問う。淤縢山津見は「その時は宣伝歌の通り直日に見直し聞直し宣り直す覚悟だ」と答えると、珍山彦は「それなら宣伝使の及第点が得られる」と言った。その時ロッキー山の方から鬨の声が聞こえて来た。一行6人は各自単独行動でロッキー山に向かうことにする。〔第10巻第12章「山上瞰下」#〕
淤縢山津見は固虎を案内者としてロッキー山に向かった。ロッキー山の山麓に着くと、数多の魔軍が出陣しようとしていた。門番の蟹彦から、ロッキー山にいる伊弉冊命は偽者でその正体は大国姫、日の出神の正体は大国彦、常世城の常世神王大国彦の正体は広国別(大国彦の部下)だと真実を聞かされる。これから黄泉島の黄泉比良坂に出陣するのだという。淤縢山津見は珍山彦(蚊々虎)の神懸かりを疑っていたことを恥じた。〔第10巻第13章「蟹の将軍」#〕
淤縢山津見・固山彦は、珍山彦と松竹梅の宣伝使と合流した。しかし珍山彦は「この3人は化け物だよ」と言うと松竹梅の姿は煙となって消えてしまう。珍山彦も消えてしまった。その後、照彦と合流する。淤縢山津見は「黄泉比良坂の戦いに参加し遅れたのは悔しい。もうロッキー山の魔軍は黄泉島へ出陣してしまった」と嘆く。照彦は「遅れたのは水も漏らさぬ神の仕組だ。戦いに出陣するのみが神業ではない。これから両人はロッキー城に進みなさい」と言うと姿を消してしまった。〔第10巻第14章「松風の音」#〕
淤縢山津見は固虎に固山彦という名を与え、ロッキー城に入り、偽日の出神(その正体は大国彦)と面会する。淤縢山津見は「自分はあなたの部下だった醜国別だ。三五教の事情を探るため、三五教の宣伝使に化けている。一切の計画を教えて欲しい」と頼む。しかし偽日の出神に「一緒に来た松竹梅の宣伝使と蚊々虎はどうした?」と尋ねられ言葉に詰まる。そこへ照彦が蚊々虎に化け、月雪花の宣伝使を連れて現れた。偽蚊々虎(照彦)は大国彦に「月雪花と偽って三五教を宣伝する松竹梅を召し連れて来た」「昨年、常世神王(広国別)から送られて来た松竹梅の3人は煙のように消えてしまったが、それは広国別の妖術である。広国別(大国彦の部下)はあなたに従うと見せかけ、密かに天教山(つまり三五教)に通じており、あなたの計画を覆す計略である」と嘘を教える。それを信じた大国彦は怒って「常世神王(広国別)を召し捕れ」と部下の逆国別に命じた。〔第10巻第16章「固門開」#~第17章「乱れ髪」#〕
大国彦はロッキー山城へ行き、偽伊弉冊命(大国姫)に、今から伊弉冊命と称して黄泉島へ出陣し味方の士気を鼓舞せよ」と命じる。そこへ淤縢山津見・固山彦がやって来て「ロッキー城は広国別の敵軍に占領されてしまった」と嘘の報告をする。大国彦は急いでロッキー城に戻ると、一人の敵軍も味方の軍もいなかった。そこで淤縢山津見が「吾は三五教の宣伝使。今まで汝の味方と偽っていたのは汝の悪逆無道を懲らすためである」と真実を教える。大国彦は逆上し、太刀を抜いて斬りかかった。淤縢山津見・固山彦は逃げ、後を大国彦が追いかける。淤縢山津見は逃げながら「至仁至愛の神の心をもって吾はこの場を逃げる」と固山彦に語る。それを聞いた大国彦は突然泣き出した。神の慈愛に感じて感涙にむせた大国彦は今までの悪を悔い改める。〔第10巻第23章「神の慈愛」#〕
黄泉比良坂の戦いで神軍が勝利した後、神伊弉諾大神は大国彦を八十禍津日神に、淤縢山津見を大禍津日神に任じた。〔第10巻第26章「貴の御児」#〕
日本神話
日本神話では、イザナギがカグツチ(火の神)を斬った時に生まれた16柱の神々の中に淤縢山津見神がいる。
8柱いる「山津見神」の二番目で、カグツチの胸から生まれた。
脚注
- ↑ 第8巻第12章「身代り」#:日の出神のセリフ「オー、貴下は大自在天大国彦の宰相、醜国別にあらざるか」、第8巻第14章「秘露の邂逅」#:醜国別のセリフ「我は大自在天大国彦の宰相なりしが重大なる罪を犯し」
- ↑ 第4巻第1章「常世会議」#:「大自在天大国彦側よりは、大鷹彦、中依別、牛雲別、蚊取別、蟹雲別、藤高別、鷹取別、遠山別、醜国別、倉波、蚊々虎、荒虎別、国弘別、出雲別、高彦らの神人、堂々として出席したり」
- ↑ 第8巻第12章「身代り」#:日の出神のセリフ「貴下は大自在天大国彦の宰相、醜国別にあらざるか。貴下は聖地ヱルサレムの宮を毀ち、神罰立所に致つて帰幽し、根底の国に到れると聞く」、醜国別のセリフ「吾は畏れおほくも大自在天の命を奉じ、聖地の宮を毀ちし大罪人なり。天地の法則に照され、根底の国に今や墜落せむとする時、大慈大悲の国治立尊は、侍者に命じ吾を海底の竜宮に救はせ給ひたり。吾らは其大恩に酬ゆるため、昼夜の区別なく竜宮城の門番となり、勤務する者なり」
- ↑ 第8巻第29章「原山祇」#:「茲に淤縢山津見は高彦をこの国の守護神として原山津見と命名し」、第8巻第30章「珍山峠」#:「高彦は巴留の国の西部の守護職となり」