祝姫 (三五教の宣伝使)
概要
主なエピソード
祝姫は、白雪郷で大中教に捕らえられていたところを日の出神に助けられ(第7巻第9~13章)、日の出神と共に竜宮島、そして筑紫島へ渡る。
筑紫の都で醜男で酒好きの蚊取別に出会い(第43~45章)、船の上で求婚される(第47章)。嫌だったが、北光神に諭されて結婚を承諾した(第48章)。
その後、イホの国で蚊取別に離縁を申し渡され、イホの都の酋長・夏山彦と結婚する(第12巻第10~15章)。
第7巻(日の出神との出会い)
[第7巻第9~13章]
祝姫は月氏国の白雪郷で三五教の宣伝をしていたが、大中教の宣伝使・健寅彦の一味によって捕まり山奥に連れて行かれてしまった。
酋長夫妻も捕まってしまったが、そこへ日の出神(自転倒島から船で筑紫島へ向かう途中[5])が現れて酋長夫妻と祝姫を救出する。酋長は日の出神から面那芸司という名をもらった。
祝姫と面那芸司は日の出神に同道することにし、一行3人は船で筑紫島へ向かって出発した。〔以上、第7巻第9章「弱腰男」#~第13章「美代の浜」#〕
第7巻(蚊取別と結婚)
[第7巻第14~48章]
熊襲の国、肥の国、豊の国、筑紫の国を順に旅して、日の出神は各地の守護職を任命して行く。
一行は筑紫の都で、大中教の宣伝使・蚊取別と出会う。蚊取別は酒好きだったが、日の出神によって酒嫌いにさせられ、三五教に帰順した。〔第7巻第43章「神の国」#~第45章「酒魂」#〕
最後に一行は袂を分かち、別行動を取ることになった。〔以上、第7巻第14章#~第46章「白日別」#〕
祝姫は船(小波丸)に乗って瀬戸の海を渡り、黄金山に向かう[6]。
船上で祝姫は、蚊取別に愛を告白され、求婚を迫られた。
祝姫は、醜男の蚊取別を、蛇よりもゲジゲジよりも嫌っていた。その蚊取別に求婚され、吐き気をもよすような思いだった。[7]
しかし先輩宣伝使の北光神に「蚊取別の燃え立つ思いを叶えてやれ。それが宣伝使の世を救う役だ」と諭され、驚く。
祝姫は──こんなことなら何故もっと早く結婚しなかったのだろう。今まであちこちから結婚の誘いがあり、中には立派な男もいた。しかし慌てることはない、宣伝使となって手柄を立ててからなら、どんな良い男とでも結婚できる、と思って結婚を先延ばしにして来た。その罰で、こんな醜い男と結婚しなくてはいけなくなったのか──と泣き伏せる。[3]
だが決心して、蚊取別と結婚することにした。〔以上、第7巻第47章「鯉の一跳」#~第48章「悲喜交々」#〕
第12巻(蚊取別と離縁)
[第12巻第10~15章]
祝姫は白瀬川の大蛇を言向け和そうと一人で白瀬川に向かった。秋月の滝で大蛇に殺されそうになるが、イホの都の酋長・夏山彦に救われた。[8] [9]
夏山彦の館に滞在するが、夏山彦に横恋慕され、夫(蚊取別)がいる祝姫は苦しんでいた。
そこへ、大蛇退治に向かう途中の三光の宣伝使・蚊取別・初公が夏山彦の館に現れた。
祝姫は、自分の苦しい胸の内をひそかに歌うが、それを蚊取別に聞かれてしまう。
蚊取別は祝姫に離縁を申し渡した。
祝姫は、自分と夏山彦の関係を疑われたのではないかと泣き伏せる。
蚊取別は──自分は、大自在天の部下の蚊取別に姿を変じているが、実は偽者である。ある尊い神の命を受け、宣伝使の養成に全力を注いでいる者だ。実際のところを言えば大化物だ。汝と結婚はしたものの、枕を共にしたことはない。安心して夏山彦と結婚して欲しい──と語った。(蚊取別の正体は木花姫命[10])〔以上、第12巻第10章「深夜の琴」#~第11章「十二支」#〕
蚊取別の媒酌によって祝姫と夏山彦は結婚式を挙げた。〔第12巻第12章「化身」#の章末〕
三光の宣伝使・蚊取別・初公、そして祝姫の一行6人は白瀬川の大蛇退治に向かった。秋月の滝で大蛇を言向け和した後、深雪の滝へ向かおうとするが、ここで蚊取別は祝姫に、ここでもう夏山彦の館に帰りなさいと言う。──宣伝使の役を完うさせたいために秋月の滝にあなたを連れて来た。そこを片付けたのだから、もう宣伝使としての責任は果たされた。最早、宣伝使の役は神界から免除された。館に帰り賢妻良母となって、夫の神業を内助しなさい──そう告げると、蚊取別は祝姫を連れて白煙となって姿を隠した。
蚊取別は、祝姫が霊(みたま)の夫婦に巡り会うまで、他の霊と結婚して使命を過つことがないように、いったん自分の妻にして、時期が来るのを待っていたのである。〔以上、第12巻第13章「秋月滝」#~第15章「宣直し」#〕
その他
この後はもう祝姫本人は登場しないが、夏山彦・行平別(初公)らと共に、イホの国からバラモン教を追い払ったことが記されている。[11] [12] [13] [14]
脚注
- ↑ 第7巻第9章「弱腰男」#:「此村に三五教の宣伝使祝姫と云ふ、それはそれは美しい女性の宣伝使が現はれて」
- ↑ 第8巻第32章「朝の紅顔」#:蚊々虎のセリフ「ある処に祝姫と云ふ古今独歩、珍無類、奇妙奇天烈、何とも彼とも言うに言はれぬ、素適滅法界の美人があつた。そのお姫さまを、彼方からも此方からも、女房にくれ、夫にならうと矢の催促であつたが、祝姫は、自分の容色に自惚れて、私は天下絶世の美人だ、アンナ人の嫁になるのは嫌だ、アンナ男を婿に取るのは、提燈に釣鐘だ、孔雀の嫁に烏の婿だ、あまりこの美人を見損ひするな。私もこれから、天下の宣伝使になつて一つ功を建て、偉い者になつた暁は、世界中の立派な男の、権威のある婿を選り取りすると言つて、どれもこれも、こぐちから肱鉄砲を乱射して居た」
- ↑ 3.0 3.1 第7巻第48章「悲喜交々」#:「祝姫は心の中に思ふ様、あゝこンな事なら何故もちと早く夫を持つて置なかつた。彼方からも此方からも夫にならう、女房に呉れいと、沢山の矢入れがあつた。その中には立派な男も沢山あつたのに、まあ世界は広い周章てるには及ばぬ、大神様のため世界のために宣伝使となり、一つの功名を立てて立派な神司となつたその上では、どんな好い夫でも立派な男でも持てると思つたのは誤り、あまり玉撰びをして男の切ない思ひを無下に辞つた。その天罰が報うて来て、世界に二人と無いやうな醜い男を夫に持たねばならぬか、それとも、せめて智慧なりと人に優れ、心の高尚な男ならたとへ色が黒うても、ひよつとこでも構ひはせぬが、選りに選つて世界の醜男に添はねばならぬか。あゝ情ない。如何しようぞや。とばかりに船底にしがみついて泣き伏しける」
- ↑ 第7巻第48章「悲喜交々」#:「茲に祝姫は蚊取別によく仕へ貞節並びなく、婦人の亀鑑と謳はれて夫婦は共に東西に別れて神の教を宣伝し、天の岩戸の変に於て偉勲を立てた雲依彦は蚊取別の後身にして、太玉姫は祝姫の後身なりける」
- ↑ 最終目的地は常世の国である。
- ↑ 第7巻第46章「白日別」#の章末:「此より日の出神は常世の国へ、面那芸司は天教山へ、祝姫は黄金山に向つて進む事となり、三柱は此処に惜しき袂を別ちたりける」
- ↑ 第7巻第48章「悲喜交々」#:「祝姫は蛇よりもげぢげぢよりも、何よりも嫌なる蚊取別に恋慕され、力限りに遁げ隠れつつありし矢先、執念深くも何処よりともなく蚊取別がこの船に乗りゐて、いやな歌を歌ひしに縮み上り、胸苦しく嘔吐を催す様な思ひに悩みゐたりしが」
- ↑ 第12巻第10章「深夜の琴」#:「秋月滝に身を打たれ 醜の魔神にさやられて 神に受けたる玉の緒の 息も絶えなむ時もあれ 情も深き夏山彦の 貴の命に助けられ 病き悩む現身を これの館に横たへて」「思ひがけなき夏山彦の 貴の命の横恋慕」
- ↑ 第12巻第12章「化身」#:「白瀬川の魔神を言向和さむと難処を伝ひ漸く秋月の滝に着く折しも、魔神の為めに悩まされ生命危き折柄、イホの酋長即ち此処に在します夏山彦様に助けられ救はれて当家にお世話となり」
- ↑ 「蚊取別」を参照
- ↑ 第26巻第3章「真心の花(二)」#:「イホの都に来りまし 教の園を開く折 三五教の宣伝使 夏山彦や祝姫 行平別の言霊に 鬼雲彦の大棟梁 根城を抜かれ是非もなく 数多の部下を引き率れて 天恵洽きエヂプトを 見捨てて来る中津国 メソポタミヤの顕恩郷」
- ↑ 第30巻第1章「主従二人」#:「夏山彦や祝姫 行平別の神司 埃及都を根拠とし 霊主体従の真相を 洽く世人に宣り伝へ(略)三五教の御教は 月日と共に栄え行く。 バラモン教の大棟梁 鬼雲彦を始めとし 鬼熊別の二夫婦 埃及の都を後にして」
- ↑ 第36巻第7章「蒙塵」#:サガレン王の歌「父は大国別の神 イホの都に現れまして 教を開き玉ひしが 三五教の神司 夏山彦や祝姫 其他百の神人に 追ひ払はれて顕恩の 郷に鬼雲彦を伴れ 教を開き玉ひしが」
- ↑ 第39巻第1章「大黒主」#:「大国彦命の長子大国別はバラモン教の教主となり遠く海を渡つて、埃及のイホの都に現はれ(略)三五教の夏山彦、祝姫、行平別外三光の神司の為に、其勢力を失墜し、遂に葦原の中津国と称するメソポタミヤの顕恩郷に本拠を構へ」