大本神諭
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出口直が艮の金神の神示を半紙に筆で自動書記したものを「筆先」と呼ぶ。筆先は平仮名と漢数字だけで書かれており、それを王仁三郎が解釈して漢字をあてはめて発表したものが「大本神諭」である。[1]
目次
呼び方
- 大本神諭を「筆先」と呼ぶ場合もある。王仁三郎自身が「筆先」と「大本神諭」をあまり厳密に呼び分けていない。
- 「裏の神諭」に対して「表の神諭」とも呼ばれる。単に「神諭」と言う場合には大本神諭のことである。「経の神諭」「経の筆先」と呼ばれる場合もある。
筆先の書記
明治25年(1892年)旧元旦の夜、出口直は艮の金神の霊夢を見た。その五日後の旧正月5日(新2月3日)の夜から発動するようになり、艮の金神の神示を声に発するようになった。[2]
明治26年(1893年)4月、放火の嫌疑をかけられ、犯人が見つかって直は放免されたが、娘婿の大槻鹿造(長女・米の夫)は直を座敷牢に閉じ込めてしまった。40日後に出牢するが、入牢中に釘で柱に書いたのが筆先の始まりとされる。[3] [4]
開祖は、帰神中に大声をあげて叫ぶことが、入牢のそもそもの原因になったことから、神に、もうこれから叫ぶことのないように、とうったえてやまなかった。すると、神は、「それでは筆をとれ」と命じた。開祖は、じぶんは文字をまったく知らないのに、とためらっていると、「お前が書くのではない。神が書かすのであるから、疑わずに筆をもて」と重ねての神示があった。近くにあった一本の古釘を手にとって動かしてみると、ひとりでに手が動き、牢の柱になにか文字のようなものを、しきりに書かせられる。出牢後、命じられるままに筆を手にすると、いろはのひらがなで、スラスラと文字が書けだした。これが筆先のはじまりである。
筆先を書くようになってから、帰神の発動はしずまった。いつから半紙に筆で書くようになったのは、はっきり判っていないが、明治26年(1893年)の秋以降と推定されている。年月日が記された筆先の写しで、現存する最古のものは、明治27年旧4月8日のものである。[5]
明治25年旧正月の「初発の神諭」は、筆先として存在したものではない。王仁三郎が明治26~27年頃の筆先を元にして復元したもので、出口直が帰神して口に発した言葉とされている[6]。
筆先は大正7年(1918年)11月に昇天するまで、およそ25年間で半紙20万枚(20枚綴りで1万冊)に上った。[7] [8]
筆先の文字はは独特の書体で、いわゆる金釘流(ヘタ字)である。直は文盲であり、自分が書いた筆先に何が書いてあるのか読めなかったため、他人に読んでもらっていた。書体は20余年間上達もせず変わらなかった。そのため直も後には筆先の文字が読めるようになったようである。[7]
大本神諭の発表
筆先は信者が筆写することはあったが、印刷物にはほとんど掲載されなかった。機関誌『直霊軍』や『このみち』に筆先の抜粋が載せられたことはあるが、まとまった形で発表され出したのは『神霊界』大正6年(1917年)2月号以降である。[9]
筆先に漢字を当てることは外国身魂のやり方であるとして旧い役員たちが反対していたが[10]、しかし平仮名主体の筆先は多様な解釈が出来るので、そのまま発表すると誤解を招くおそれがある。そのため王仁三郎は筆先の発表を見合わせていたようである。[11]
しかし大正5年(1916年)10月の神島開きによって、王仁三郎が「みろく様」の霊統であることが明らかにされたため、王仁三郎が筆先を取捨選択したり加筆したり漢字を当てはめたりすることが公然と可能になった。[11]
こうして筆先が「神諭」として『神霊界』大正6年(1917年)2月号から大正9年(1920年)9月号まで掲載・発表された。[9]
発表された順序は、筆先が書かれた年月日の順ではなく、ランダムである。
『神霊界』には「おふでさき」と題して平仮名文の筆先も掲載されている。
大本神諭の刊本
神霊界で発表された大本神諭は、単行本となり、大正7年(1918年)12月に『大本神諭 第一輯』が、翌8年2月に『大本神諭 第二輯』が刊行された。8年11月にはこの2輯を合わせて『大本神諭 天の巻』として刊行された。計画ではその後『火の巻』『水の巻』『地の巻』の計4巻出す予定だったが、『火の巻』は9年7月28日に出版された後、すぐに当局により発禁処分となり、残りは出版されずに終わった。
大正10年(1921年)第一次大本事件の後は、新たな教典として霊界物語の刊行が進められたが、大正12年4月に口述された第60巻第20~25章には大本神諭が「三五神諭(おおもとしんゆ)」として収録されている。
これは筆先を新たに解釈し直したものであり、使われている言葉や表現に相違がある。 →「#大本神諭と三五神諭の相違点」を見よ
昭和二十五年版
第二次大戦後はまず、昭和25年(1950年)8月に『大本神諭 第一集』が刊行された。(オニペディアでは仮に昭和二十五年版と呼ぶことにする)
これは明治25年から32年までの大本神諭を抜粋して収録したものである[12]。これは第一集だけであり、第二集以降は刊行されていない。
昭和三十五年版
昭和35年(1960年)6月に『大本神諭 第一巻』が刊行された。(オニペディアでは仮に昭和三十五年版と呼ぶことにする)
主な特徴は、
などがある。また、文言がかなり削除されている(時代情勢に配慮したと思われる)。
第一巻は明治25年から32年までの神諭が収録された。第二巻以降も発行予定だったが、結局発行されずに、新たに編纂し直された五巻本(次項参照)が刊行されている。
→詳細は「大本神諭 (昭和三十五年版)」
五巻本
昭和43年(1968年)から46年にかけて『大本神諭』が「第一集」から「第五集」[14]まで全5巻(通称・五巻本)刊行された。これは王仁三郎が神霊界で発表した大本神諭とはまた別の発想で編纂されたもので、特徴としては、
神霊界掲載の大本神諭が全277篇であるのに対して、五巻本収録の大本神諭は全972篇と、大幅に増加している。
七巻本
昭和58年(1983年)から59年にかけて『おほもとしんゆ』全7巻(通称・七巻本)が刊行された。特徴としては、
- 神霊界掲載の大本神諭を底本にした。
- 順序は神霊界に掲載された順序。
- 新仮名遣い。
- PC(ポリティカル・コレクトネス)処理。現代において差別的とされる言葉などを省略(削除)したり、平仮名にした。
収録数は275篇であり、神霊界掲載のものと較べて2篇足りない。未収録の神諭は次の2篇である。
→詳細は「大本神諭 (七巻本)」(おほもとしんゆ)
天声社以外
- 『日本庶民生活史料集成 第18巻 民間宗教』昭和47年(1972年)、三一書房、P3~P104:火の巻が底本になっている。
- 『大本神諭 天の巻』『大本神諭 火の巻』昭和54年(1979年)、平凡社・東洋文庫。 →詳細は「大本神諭 (東洋文庫版)」
- 『大本史料集成 Ⅰ 思想篇』1982年、三一書房、P13~P485:神霊界の大本神諭の他、筆先も含め多数。年代順に収録。
- 『大本神諭』全5巻、平成22年(2010年)11月~平成24年8月、愛善世界社:神霊界掲載の大本神諭を元に、年代順に収録。 →詳細は「大本神諭 (愛善世界社版)」
- 『大本神諭 水の巻』(別冊 大本教学)、平成22年(2010年)4月、大本信徒連合会:大正時代に「天の巻・火の巻(発禁処分)が出版され、水の巻は出版に向けて聖師様の校閲を得て第一校まで進行した段階で大本第一次弾圧事件が起こり、中断の止むなきに至っていた」(同書「序」より)が、それを研修資料として刊行したものである。神霊界で発表済みの神諭であり、新しいものはない。
刊行略年表
- 大正7年(1918年)12月、『大本神諭 第一輯』が大日本修斎会から発刊。
- 大正8年(1919年)2月、『大本神諭 第二輯』が大日本修斎会から発刊。
- 大正8年(1919年)11月、『大本神諭 天之巻』が大日本修斎会から発刊。(前掲の第一輯と第二輯を合わせたもの)
- 大正9年(1920年)7月、『大本神諭 火之巻』が大日本修斎会から発刊。(8月に発禁処分となる)(水の巻、地の巻も発刊予定だった)
- 昭和25年(1950年)8月、『大本神諭 第一巻』が瑞光社から発刊。(全1巻)
- 昭和35年(1960年)6月、『大本神諭 第一集』が天声社から発刊。(全1巻)
- 昭和43年(1968年)11月、『大本神諭』全5巻が大本教典刊行会から発刊(~昭和46年)。通称「五巻本」。
- 昭和47年(1972年)3月、『日本庶民生活史料集成 第18巻 民間宗教』に収録。(大正9年刊『大本神諭 火之巻』が底本)
- 昭和54年(1979年)1月、『大本神諭 天の巻』、2月『同 火の巻』が平凡社・東洋文庫から発刊。
- 昭和57年(1982年)6月、『大本史料集成 1』に未発表の筆先も含めて収録。
- 昭和58年(1983年)2月、『おほもとしんゆ』全7巻が大本神諭刊行会から発刊(~昭和59年2月)。通称「七巻本」。
- 平成22年(2010年)4月、『大本神諭 水の巻』(別冊大本教学)が大本信徒連合会から発刊。
- 平成22年(2010年)11月、『大本神諭』全5巻が愛善世界社から発刊(~平成24年8月)。通称「愛善世界社版」。
大本神諭の原本
大本神諭は二度の大本事件によって王仁三郎の直筆原稿が失われた。そのため『神霊界』に掲載されているものが「現存する唯一の全文そろった原本」[17]である。
大本神諭の内容
→「大本神諭の内容」を見よ
大本神諭と三五神諭の相違点
霊界物語第60巻第20~25章に「三五神諭(おおもとしんゆ)」が収録されているが、大本神諭との主な違いは次の3つある。全体的に見て、厳霊的な解釈から、瑞霊的な解釈に変更されたというようなかんじである。
(1) 大本神諭の「立替え立直し」という言葉が「天の岩戸開き」に置き換えられている。
【例】(初発の神諭)
- 大本神諭:「神が表に現はれて、三千世界の立替へ立直しを致すぞよ」〔大本神諭 明治二十五年旧正月/a016-a017#〕
- 三五神諭:「神が表に現はれて、三千世界の天之岩戸開きを致すぞよ」〔第60巻第20章「三五神諭 その一」/a016-a017#〕
(2) 外国差別・国粋主義的な表現が修正されている。
【例】(初発の神諭)
- 大本神諭:「外国は獣類(けもの)の世、強いもの勝ちの、悪魔ばかりの国であるぞよ。日本も獣の世になりて居るぞよ。外国人にばかされて、尻の毛まで抜かれて居りても、未だ眼が覚めん暗がりの世になりて居るぞよ」〔大本神諭 明治二十五年旧正月/a007-a013#〕[18]
- 三五神諭:「今日(いま)は獣類(けもの)の世、強いもの勝ちの、悪魔ばかりの世であるぞよ。世界は獣の世になりて居るぞよ。邪神(あくがみ)にばかされて、尻の毛まで抜かれて居りても、未だ眼が覚めん暗がりの世になりて居るぞよ」〔第60巻第20章「三五神諭 その一」/a007-a013#〕
(3) 神のイメージが恐い神ではなく、優しい神に変わっている。
【例】(初発の神諭)
- 大本神諭:「此世の鬼を往生さして、地震(じしん)雷(かみなり)火の雨降らして、○○○(たやさ)ねば、世界は神国にならんから」〔大本神諭 明治二十五年旧正月/a094-a097#〕
- 三五神諭:「此世の鬼を往生さして、慈神(じしん)神也(かみなり)慈悲の雨降らして、戒めねば、世界は神国にならんから」〔第60巻第20章「三五神諭 その一」/a081-a084#〕
脚注
- ↑ 第7巻総説#:「教祖の直筆は所謂お筆先であり、そのお筆先を神示に随つて、取捨按配して発表したのが大本神諭である」
- ↑ 『大本七十年史 上巻』「開教#」
- ↑ 『大本七十年史 上巻』「放火の嫌疑#」
- ↑ 『大本七十年史 上巻』「四〇日の座敷牢#」
- ↑ 『大地の母 第5巻』「唐行き#」:「実際に筆を持って紙に書いたのは、八木から帰った二十六年秋以降と推定される。八木にいる期間に筆先を書いたという資料はない。年月日が記入された現存する最も古い筆先の写しは、明治二十七年旧四月八日の物で、それ以前の筆先は内容によって年月を推定するばかりである。」
- ↑ 『大本七十年史 上巻』「初発の神諭#」
- ↑ 7.0 7.1 『大本七十年史 上巻』「釘で記された筆先#」
- ↑ 第1巻附記 霊界物語について#:「教祖の書き残された一万巻の筆先も」
- ↑ 9.0 9.1 『大本七十年史 上巻』「神諭の発表#」
- ↑ 「昔は、漢字で書いた本を読めばすぐ、外国の悪霊が憑いて居るのであると私を責めた位であるから、周囲に居る人に漢字の読めた人は一人も無い」〔水鏡「厳と瑞」#〕というくらい漢字は拒絶されていた。
- ↑ 11.0 11.1 『大本七十年史 上巻』「神島開き#」
- ↑ 『大本七十年史 下巻』「梅花運動#」
- ↑ 王仁三郎が大本神諭として発表していない筆先に編者が漢字を当てはめたもの
- 。
- ↑ 第一集の「あとがき」に「既刊〝第一巻〟の神諭とは、その内容が増加し年月日の位置づけも改まりましたので、〝大本神諭第一集〟とよぶことにいたしました」と書かれている。
- ↑ 『大本神諭 第一集』「あとがき」:「このたびは、できるだけ原文のとおり平がなを主とし、それを特定のもののほかは現代かなづかいにしました。しかし当てられていた漢字に、とくに聖師の意を用いられているところは、そのまま残さして頂きました。」
- ↑ 『大本神諭 第一集』「あとがき」:「この"大本神諭"には、未発表のものも新たに多く加えられ、厳密な調査検討のうえ、年月日順を正しく整理しなおしました。」
- ↑ 『おほもとしんゆ 第一巻』「あとがき」p269
- ↑ 昭和58年(1983年)刊行の『おほもとしんゆ』(通称・七巻本)では「がいこくはけものの世、強いもの勝ちの、悪魔ばかりの国であるぞよ。日本もけものの世になりて居るぞよ。尻の毛まで抜かれて居りても、未だ眼が覚めん暗がりの世になりて居るぞよ」になっており、「外国人にばかされて」は削除されている。
参考文献
脚注に明記されたもの以外の参考文献。
- 『おほもとしんゆ 第一巻』(七巻本)「あとがき」
- 『大本神諭 天の巻』平凡社・東洋文庫、p157~175、村上重良の「解説」
関連項目
外部リンク
- 大本神諭 - ウィキペディア
- 大本神諭、筆先、伊都能売神諭の総目次 - 王仁DB
- 大本神諭 - 霊界物語ネット