入蒙
入蒙(にゅうもう)とは、出口王仁三郎が大正13年(1924年)に、蒙古を宗教的・平和的に統一して東亜連盟の基礎を築くため[1]大陸に渡った行動のこと。奉天から馬賊約1千名の集団を引き連れ外蒙を目指して行軍したが、途中で現地軍に捕まり強制帰国となった。その記録は霊界物語の「入蒙記」に記されている。

概要
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出口総裁入蒙進路要図
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素尊汗進路要図
人物
王仁三郎の入蒙に関わる主な人物は次の通り。入記や入蒙記に登場しない人物もいる。入記では実名だが入蒙記では仮名になっている人物もいる(仮名・別名は[]内)。
- 出口王仁三郎[源日出雄、王文祥]
- 松村真澄[真澄別、王文真]
- 北村隆光[隆光彦]
- 矢野祐太郎[唐国別、王天海]
- 植芝盛平[守高、王守高]
- 名田音吉[名田彦、趙徹]
- 萩原敏明[王敏明]
- 岡崎鉄首[侯成勲]:満州浪人
- 佐々木弥市[王昌輝]:満州浪人
- 大倉伍一[石大良]:満州浪人
- 盧占魁:東三省陸軍中将
- 揚萃廷:盧占魁の参謀長
- 王元祺:通訳
- 張作霖:東三省保安総司令
- 揚巨芳
- 井上兼吉
- 坂本広一:日出雄の近侍
- 張貴林:蒙古の隊長
- 白凌閣:公爺府王の親戚、19歳の青年
- 老印君:公爺府の協理
- 温長興:盧占魁の副官
- 曼陀汗:
- 何全孝:護衛団長
- 藤田武寿、加藤明子、国分義一:大本信徒
- 王敬義:軍事顧問(日本人)
- 猪野軍医長:
- 劉陞山[劉陞三]:
- 蘿龍:馬賊の女頭目
- 蘿水玉:蘿龍の母
- 王文泰[蘿清吉]:蘿龍の父、日本人、出口清吉か?
略史
出発の経緯
大正10年(1921年)2月12日(旧1月5日)、第一次大本事件が勃発した。出口王仁三郎は大阪・梅田の大正日日新聞社社長室にて午前9時半頃に検挙された。この時、晴天の空に〈上弦の月〉と〈太白星〉が白昼にもかかわらず輝いているという珍しい現象を目撃した。
それから3年後の大正13年(1924年)2月12日(旧1月8日)、綾部で王仁三郎は再び同じような天文現象を目撃した。白昼に〈楕円形の月〉と〈太白星〉が輝いていたのである。
3ヶ年を経て同月同日の白昼の天空に、同じような現象があったことは決して只事ではあるまいと王仁三郎は感じた。〈いよいよ自分が神命を奉じ万民救済の為、人類愛実行の為、天より我にその実行を促すものと考へた〉。
これによって渡支(支那に渡る)の決心を定め、今夜のうちに出発することを数名の側近に告げた。〔入蒙記第6章「出征の辞」#〕
目的
王仁三郎の入蒙の目的は、〈宗教的、平和的に蒙古を統一し東亜連盟実現の基礎を立て〉ることである。当時の中国大陸は清朝が崩壊(最後の皇帝・溥儀が1912年2月12日に退位)し、中華民国が樹立されたものの、全土を支配したわけではなく、各地で軍閥が勃興し、国内は混乱状態であった。王仁三郎の使命は世界統一である。〈宗教的に世界の統一を図り地上に天国を建設する準備として先づ新王国を作り、東亜の連盟を計るのが順序〉だと考えて、入蒙を決意した。〔入蒙記第5章「心の奥」#〕
入蒙の決意を促すいくつかの出来事がある。一つは3年前と同じ特異な天文現象を目撃したことである。二つ目は現地協力者が出現したことである。2月5日、王仁三郎は矢野祐太郎(入蒙記では唐国別という名)から盧占魁の存在を聞いた。盧占魁は蒙古で英雄視されている馬賊の大巨頭で、もし王仁三郎と会見して意見が合ったら天下のために大活動をやってみたいと渇望しているということを矢野から聞いた。盧占魁という現地協力者が現れたことが王仁三郎の入蒙の決意を促進させた。〔入蒙記第4章「微燈の影」#~第5章「心の奥」#〕
王仁三郎の初期目的は蒙古を宗教的に統一することだが、側近たちは王仁三郎から〈まず蒙古におもむき、そこから新彊へ、さらにエルサレムに足をのばして、いずれは中国の五台山[4]で世界宗教会議をひらいて、各宗教の連合を結成するのだと聞かされていた。それは『霊界物語』にある素盞嗚尊の世界遍歴のくだりとも符合するものであった〉[5]。
また、王仁三郎は第一次大本事件によって世間から誤解・圧迫を受けていたため、〈国家の為めになる大事業を完成して、日頃主張せる愛神、勤王、報国の至誠を天下に発表し、今迄の疑惑を解くべき必要に迫られて〉いた。これも入蒙の副次的な目的であった。〔入蒙記第7章「奉天の夕」#〕
略年表
- 2月12日
- 月と太白星が白昼輝くのを目撃〔入蒙記第6章「出征の辞」#〕
- 2月13日
- 午前3時半、綾部を汽車で出発〔入蒙記第7章「奉天の夕」#〕
- 夜、下関港を出航
- 2月14日
- 朝、釜山港に上陸、鉄道で北上
- 2月15日
- 夜、奉天に到着、盧占魁と面会〔入蒙記第8章「聖雄と英雄」#〕
- 3月3日
- 奉天を出発〔10章〕
- 3月6日
- 鄭家屯《ていかとん》に到着〔入蒙記第12章「焦頭爛額」#〕
- 3月8日
- 洮南《とうなん》に到着〔入蒙記第13章「洮南旅館」#〕
- 3月25日
- 洮南を出発〔15章〕
- 3月26日
- 公爺府《こんえふ》に到着
- 4月26日
- 奥地へ向けて公爺府を出発〔入蒙記第20章「春軍完備」#〕
- 4月28日
- 下木局子《しももっきょくし》に到着
- 5月14日
- 上木局子《かみもっきょくし》に移動〔入蒙記第24章「木局の月」#〕
- 6月3日
- 興安嶺《こうあんれい》の聖地を目指して出発〔入蒙記第28章「行軍開始」#〕
- 6月5日
- 進路が何故か南方に変わる〔入蒙記第29章「端午の日」#〕
- 天保山の跡を目撃
- 6月11日
- 熱河区内のラマ廟に到着〔入蒙記第31章「強行軍」#〕
- 6月21日
- 白音太拉《パインタラ》に到着〔入蒙記第34章「竜口の難」#〕
- 支那軍に武装解除させられる
- 6月22日
- 午前1時、捕縛される。
- 盧占魁ら銃殺される、王仁三郎らも銃殺されそうになるが、助かる
- 6月23日
- 早朝、鄭家屯の日本領事館の土屋書記生が面会〔入蒙記第35章「黄泉帰」#〕
- 7月5日
- 日本領事館に引き渡される
- 7月21日
- 大連に到着
- 7月25日
- 門司に到着
- 7月27日
- 大阪刑務所北区支所に収監〔入蒙記第36章「天の岩戸」#〕
- 11月1日
- 保釈され98日ぶりに出所し帰綾
関連項目
- 入蒙記
- 王仁蒙古入記
- 『まつのよ (教学誌)#第六号』特集「聖師ご入蒙」
- 出口和明『出口王仁三郎 入蒙秘話』
- 朽木寒三『馬賊戦記』:馬賊の小日向白朗(こひなた はくろう)の伝記小説。小日向は入蒙した王仁三郎と秘かに面会しており、その時の様子が小日向の視点で描かれている。