家口いく
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略歴
王仁三郎と初対面
いくは初めて王仁三郎と面会した時のエピソードを次のように回顧している。[5]
昭和四年、九州から初修行に亀岡に来た時のことです。聖師さまは高天閣でした。昔は修行者は、高天閣で御面会でした。聖師さまはお机で、みんなぐるりと坐るでしょう。おじぎして、聖師さまが一人一人を御覧になって、またおじぎしてズーと行くでしょ。みんなが辞去して帰った後も、私はいつまでも立ち上がれないのです。あれは霊縛をかけられていたのでしょう。すると聖師さまが藪から棒に、
「タルヒトか、タケヒトか」
と聞かれたので、私はとっさに、
「熾仁……」
と答えました。
「よかった。タケヒトでなくって」
と聖師さまは言われました。あれはおそらく、禅問答のようなものでした。(和明註・いくの別の手記などからも察するに、いくは熾仁親王の異母弟の名が威仁(たけひと)親王であることを、知らなかったのではないか。だからタケヒトという言葉を、禅問答のように受け止めたのであろう)そうすると、聖師さまが私を抱きかかえて、
「苦労したやろうなあ。かわいそうに」
とおっしゃった。そのお言葉で、私は今までの悲しかったことがいっぺんに流されて、すがすがしゅうなりました。
「私とお前とは、十八も違うぞ」
著述
『おほもと』昭和37年(1962年)4月号p48-51に家口郁子「おもかげ─二代さまの思い出─」と題する随筆あり。