野探
前章(第57巻第2章「煽動」#)で、ワックスがデビス姫を生け捕るため、宮町の人々を動員して郊外に探しに向かった。宮町の人々が家を留守にしている間に、ワックスの部下2人(オークス、ビルマ)が家の中を探し回って盗みを働いた。
野外を探し回るという意味での「野探し」と、家の中を探し回るという意味での「家探し(やさがし)」が引っ掛けてある。「家探し」とは〈家のなかを残らずあちこちとさがし求めること〉〔広辞苑〕。
〈百戸許りの町民は、ワックスの妖言を一も二もなく信じて仕舞ひ、家を空にして姫の捜索に出掛けたのである。どの家もどの家も家を空にして外に飛び出し、猫の子一匹留守をして居なかつた。其間にオークス、ビルマの両人はワックスの内命により、留守の家々を探つて目ぼしい物品を残らず盗み出し、テルモン山の或る岩窟へ運ばせて置いた。百戸が百戸とも最も大切なる物品を一つも盗まれない家は無かつた。〉