世界大家族制

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世界大家族制(せかいだいかぞくせい)は、出口王仁三郎が提唱する思想。世界全人類を一つの家族として大家族制(相互扶助・財産共有など)を実施しようというもので、天皇を天下一家の家長とする。これを実現することが「皇道維新」である。

目次

概要

 皇道の根本大目的は、世界大家族制度の実施実行である。畏くも天下統治の天職を惟神に具有し給う、天津日嗣天皇の御稜威に依り奉るのである。

 まず我が国にその国家家族制度を実施し、以てその好成績を世界万国に示してその範を垂れ、治国安民の経綸を普及して地球上の各国を道義的に統一し、万世一系の国体の精華と皇基を発揚し、世界各国威その徳を一にするが皇道の根本目的であって、皇道維新、神政復古の方針である。(略)

 天産自給における国民住宅の根本義は、全国民一人の徒食遊民の絶無なるをもって基礎となすべきものである。これ即ち国家的大家族制度の実現せらるべき所以である。統一的国民の住宅は、天産自給の国家経済を充実円満ならしむるのが大主眼である。(略)

 次に世界大家族制度の根本義について述べる。

 日本天皇は先天的に世界の大元首に坐しまして世界の国土及び財産の所有権を有したまい、国土財産の行使権及び人類の統治権を絶対に享有し給うが故に、大日本国に天壌無窮の皇統を垂れたまい、神聖なる皇祖御遺詔の宏謨に循い、皇国において統治の洪範を経綸し、治国安民の政体を世界に宣揚し、以て範を天下に垂れ、世界を総攬統治し給う御事の由来は、皇典古事記に垂示し給える天理の大憲章である。

 しかれば今後の経済的社会の制度は、

  皇道経済を実行する事

  国民の一般的男女の職業を制定する事

  産業は国家経綸の目的によって国民共同的に従事する事

  貿易は国家事業として国際的に行わるべき事

  国民の生活に関する一切の物資は、経済者(商人)によりて円満に供給せらるる事

  全国の交通機関は、必要に応じ全国民無料にて使用あるいは乗用に供せらるべき事。

 以上は神聖なる皇祖御遺訓の大精神による国民的経済に関する国家経綸の大要である。(略)

 かく論ずる時は、社会の智者学者輩またはその筋の人々より色眼鏡を掛けて見らるる時は、社会主義者、共産主義者と誤解さるる事もあろうと思うが、日本肇国の精神である以上は、如何ともする事は出来ない。誰が何と言っても皇運発展の為に現代世界的国家の経綸を根本変革して、祖先の遺風を顕彰すべき現代日本臣民が焦眉の急務なのである。

出典: 『皇道維新と経綸』「皇道維新に就て#」(『大本史料集成』収録のもの)
経綸の大要を一括して言はば、世界大家族制度の実施なり。これ皇国経綸の根本義にして、その世界大家族制度の家長たるは万世一系の皇運を保ち給ふ、大日本天津日嗣天皇に坐ますなり。これ実に皇道に於ける世界統治の基礎たる可きものなり。
出典: 『皇道維新と経綸』「世界の経綸#」(『大本史料集成』収録のもの)
(略)外国は禅譲、放伐、自由、協和、共産等の政体、日本は万世一系の大家族主義の国体である。  何か過失があると、すぐ逐出して仕舞うて新しい人にかへると云ふ思想、やり方は面白くない。之は外来思想である。やり方が悪くばよく言ひ聞かせて、改めさすやうにするのが家族主義のやり方である。
出典: 玉鏡「勇往邁進」#

皇道大本が精神的大家族制度を唱へると、新聞紙や社会主義者や其他官憲が之を共産主義と看做したり財産平均論と考へ違ひをして居るのであります。皇道大本で唱ふるところは、決して財産平均論ではない。本を索ねて行くと一つであるから、互に助けて行かなければならぬ。皆親子兄弟であるから君臣一致、或は四海同胞、皆其の志を等しうして行くと言ふ大家族制度であります。此の大家族制度を共産主義と見たり、或は財産平均論と看做すのは、皆物質に固まつて居るからである。(略)

 又私有財産云々と云ふ事に就ては、其の筋から注意がありましたが、之も世間の誤解からであります。決して私有財産を云々するのではない。現在は余りに彼我の程度に差異がある。一方には無茶苦茶に贅沢をして、妾宅を構へ、栄耀栄華を逞しうして居るのに、一方では一碗の飯も満足に得られない者さへある。祖先は一つで皆兄弟であるのに、斯の如くであつては、精神的大家族制度とは謂はれない。自分の衣食住にさへ差支へなければそれで宜いのである。私有財産を無茶苦茶に貯めると云ふよりも、公益の為に尽すが宜い、陛下の為に尽すが宜いと云ふ所から、私有財産を軽んずと云ふのであるが、それよりももつともつと尊い所の物は、霊的の宝を天に積めよと仰せられて居られるのであります。
出典: 『出口王仁三郎全集 第五巻』「皇典と現代〔一〇〕天若日子之段#
 皇道は天下一家即ち大家族制実現の大精神である。この大精神を世界に拡充し成就し、一切に恵みの雨を降らして大和楽の地上天国を建設すべきものである。これが皇国日本の大使命であると共に日本国民の天賦的使命でなくてはならないのである。しかしてこの大使命を遂行するには、どうしても皇道政治、皇道経済の実施にまたねばならぬのである。
出典: 『惟神の道』「汚穢物を取除け#

(注・出口日出麿の論説)

 皇道といふのは『統べる道』だから、皇道精神が即ち大家族精神である、中心の為全体の為に個々が奉仕し犠牲になる所に一切の保持があり、弥栄がある、この最も簡明にして最も肝要ある道理を忘れて、個人主義的傾向が盛んになつて来ては正に獣の世の中以下である。(略)

 西欧にすぐれた文化がありながら、又個人としては立派な人が居り乍ら、段々国が衰へて来るのは、一口に言へば皇道がないからであり、大家族精神の重要性を知らないからである。何があつても、秩序と平和と幸福との、最大要件なる大家族精神が欠けて居ては万事休すさ。

 此点に於て、一君万民、神代ながらの大家族、『義は君臣にして情は即ち父子』なる我日本こそ、地上の天国神定の宗主国である、何彼と段々外国から習ひにも来るべき国である。威張るのではない『天に一日地に一君』の大家族で、統一、調和、平安の基礎は、其の中心に帰向し、真釣り合ふところにある、皇道と大家族精神を全世界へ普及拡充するのが、日本人の大使命で、これが世界の立て直しである。
出典: 『昭和青年』昭和9年(1934年)4月号、出口日出麿皇道と大家族精神#」(『大本史料集成』収録のもの)

大家族精神運動

昭和9年(1934年)2月から大本は大家族精神運動を展開した。

 一九三四(昭和九)年二月三日、大本節分大祭、聖師入蒙十周年記念祭執行後、統理の出口宇知麿は「国体闡明運動、国防運動を継続すると共に、更に皇道の本義にもとづく『大家族精神運動』を起し、極力これら諸運動の徹底に努むる事」と指示するところがあった。

 この大家族精神運動に関する運動趣旨は「大日本建国の大精神は皇道即ち宇宙創成の神の御意志そのものである。……天地惟神の大道たる皇道の本義を明らかにして、天下一家の大家族精神を発揚し、之を世界に光被すべきが皇国民たる尊き使命天職である。この大家族精神の確立は一身一家に始つて汎く天下に拡充さるべきであり、八紘を掩ひて六合を宇とする建国の大精神は、斯の道によりてのみ実現さるるのである」とするものである。「人類愛善新聞」はこの運動のなかで、全国的に標語を募集し、「大家族精神輝く日本」という標語が当選作と決定された。この標語は日出麿総統補の書で印刷され、市町村の戸毎にかかげるよう指示された。昭青・坤生の会員によって、山間僻地にいたるまで配布されることになったのである。
出典: 『大本七十年史 下巻』「多彩な大本#

人類愛善新聞』では1月上旬号からすでに大家族精神運動の記事が掲載されている。『真如の光』は2月17・25日合併号から、『昭和 (機関誌)』は4月号から、『神の国 (1921)』は5月号から、大家族精神運動の記事が掲載されている。

思想的には唯物主義、社会的には資本主義の累禍により、人類は滔々として誤れる自由主義、個人主義に奔った、当然の帰結として所謂道徳は頽廃し、家族制度は崩壊に瀕してゐる、だが吾らは時代に逆行して再び封建治下に於ける道徳を高揚し、若くは封建的観念による家族制度を夢みやうといふではない、天運正に到って皇道世界を光被するの機は漸く熟するかの観がある、凡てのイズムはここに統合され、悉くの観念意識はここに清算され改められねばならぬ運命を有つ、此の時に当つて、皇道に立脚する、而して国家社会を構成する細胞たる『家族』を単位となす、新しき意味の団体主義こそは精神、物質両生活破綻の闇に彷徨する人類への炬火であり、軈ては次の時代の悦楽を享受すべき資格を約束するものと思惟される、吾らここに信ずる所あり、『大家族精神運動』を提唱し、吾らの全機構を挙げてこの指導精神の徹底を期せんとする

 皇道による家族制度、これを縦に看れば比類なき皇国の伝統を尊重発揮するの謂であり、横に拡充しては四海同胞、天下一家の春を楽しまむとする、之を小にしては修身斉家の道、之を大にしては治国平天下の大道でなければならない
出典: 『人類愛善新聞』昭和9年(1934年)1月上旬号p3の「大家族精神高揚の新標語を募る」人類愛善新聞社の社告

関連資料

関連項目

外部リンク

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脚注