夢の跡
言霊別命は稚桜姫命に対して心底より反抗しようとしたのではなかった。単に自分の神力を示し、小島別以下の諸神司を覚醒させようという誠意から出たものであった。言霊別命は竜宮城に帰城し、めでたくこの紛争は終結を告げた。
言霊別命は、稚桜姫命の言霊別命に対する疑念が晴れないため、一時竜宮城を出てローマに住み、時期が至るのを待っていた。言霊別命は稚桜姫命に詫び状を書いたが、そこには「稚桜姫命が心を改めて嫉妬心を捨て、常世姫たちを処罰するなら、喜んで帰城する。しないなら、ローマに新たに地の高天原を開き竜宮城を建設して、稚桜姫命に対抗する」という意味のことが記されていた。そのため紛争となった。章題は、その言霊別命の"夢"が消え去り、はかない現実に戻った、というような意味。