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[[筑紫島]]から帰国した黒姫は、[[麻邇宝珠]]の赤色の玉の御用に奉仕し、[[三五の玉]]の神業は完了する。その後、高山彦の回顧歌から、自分が35年前に一夜を結んだ男(玉治別の父)が高山彦だったことを知り、嬉し涙にかきくれた<ref>{{rm|33|21|峯の雲}}</ref>。〔{{rm|33|17|感謝の涙}}~{{rm|33|21|峯の雲}}〕 →「[[玉治別]]」「[[高山彦 (黒姫の夫)|高山彦]]」「[[麻邇宝珠]]」参照
[[筑紫島]]から帰国した黒姫は、[[麻邇宝珠]]の赤色の玉の御用に奉仕し、[[三五の玉]]の神業は完了する。その後、高山彦の回顧歌から、自分が35年前に一夜を結んだ男(玉治別の父)が高山彦だったことを知り、嬉し涙にかきくれた<ref>{{rm|33|21|峯の雲}}</ref>。〔{{rm|33|17|感謝の涙}}~{{rm|33|21|峯の雲}}〕 →「[[玉治別]]」「[[高山彦 (黒姫の夫)|高山彦]]」「[[麻邇宝珠]]」参照
=== 筑紫島の旅 ===
第34~35巻は[[筑紫島]]を舞台に黒姫が夫・高山彦を探して旅をする物語である。もう少し細かく言うと、次の3グループの人物を中心としたドラマが交錯して物語が進展して行く。
# 黒姫
# [[房公]]・[[芳公]]
# [[虎公]]・[[お愛]]・[[大蛇の三公]]<ref>虎公とお愛は夫婦。大蛇の三公と最初は敵対しているが、黒姫の活躍により和解し、その後協力して[[スッポンの湖]]の大蛇を言向け和しに行く。</ref>
ここでは黒姫が関わるエピソードだけを説明する。→詳細は「[[第34巻]]」「[[第35巻]]」
【概略】
黒姫は表向きは玉探しを名目にして筑紫島へ渡った。しかし真の目的は消えた夫・高山彦を探すことであった{{rm|34|1|筑紫上陸}}:〈恋しき夫に捨てられし 黒姫今は矢も楯も 堪らぬ様になり果てて 玉の捜索第二とし 夫の所在を探らむと〉、〈麻邇の玉の所在や、黄金の玉の所在を捜索すると云ふは、只単に表面の理由であつて、其実玉に対しては、既に執着心を殆ど脱却してゐたのである〉。
夫探しの旅の過程で、自分が35年前に捨てた息子・[[富士咲]](「[[#青年時代]]」参照)ではないかと思われる人物を見つけた。黒姫はその人物([[熊襲の国]]の神司・[[建国別]])が自分の子供かどうか確認しに行く。しかし人違いであった。(建国別は[[高姫]]の捨て子だったことが帰国後に判明する)
その後、夫の高山彦だと思われる人物が見つかった。彼に会うため[[火の国]]へ行くが、これも別人だった([[高国別]]が「高山彦」と名乗っていた)。そこへ、[[自転倒島]]から黒姫を追ってやって来た[[玉治別]]が現れる。玉治別は、高山彦が実は[[綾の聖地]]にいる<ref>高山彦は綾の聖地の伊勢屋の奥座敷で下女の「虎」と隠れて遊んでいた。→「[[高山彦 (黒姫の夫)#第27巻、第33~35巻]]」参照</ref>ことを黒姫に教えるため、わざわざ筑紫島までやって来たのだった。ここで黒姫は、35年前に捨てた息子は玉治別であったこと知り、再会に喜んだ。
【従者との別れ】
黒姫は日本から3人の従者([[孫公]]、[[房公]]、[[芳公]])を連れて筑紫島へ渡った。何度も船を乗り換え、筑紫島の[[建日の港]]に到着するまで1年ほどかかった<ref>{{rm09|34|0002|総説}}:〈日本海から太平洋に出で、'''一年'''有余の日子を費やして亜弗利加の建日の港に安着し〉</ref> <ref>{{rm|34|1|筑紫上陸}}:〈黒姫が此建日の港に着く迄には幾度となくあちらの島へ寄り、此方の島へ寄り、厳しい捜索をやつて居た為、余程日子を費やしてゐる。殆ど'''一年'''許り掛つた。〉</ref>。3人の従者はその間、黒姫を身近に見てきて、ほとほと愛想が尽きていた。口ばかり達者で、行いが伴わないからだ(たとえば他人の船を盗んだりした)<ref>{{rm|34|1|筑紫上陸}}:〈船は二三回難破し、便宜の方法にて舟を買つたり、拾つたりし乍ら、漸くここへ辿り着いたのである。其間には随分背中に腹の替へられないやうな憂目に遭ひ天則違反的行動をも続け、島に繋ぎありし、何人かの舟をソツと失敬して、乗つて来た事もあるのであつた〉</ref>。
山道を登る途中、孫公が尖った石に腰を強く打って人事不省になってしまった。しかし黒姫は冷ややかな態度で、「黒姫の言うことに口答えし、長上を侮辱して来た天罰です。気味のよいことだ」とニヤリと笑うだけで助けようとしなかった。房公が鎮魂をかけて孫公が息を吹き返すと、「この黒姫の鎮魂のお蔭で甦ったのだよ」と他人の手柄を横取りするのだった。〔{{rm|34|2|孫甦}}〕
一行はハチの大群に追いかけられ、一気に山を駆け登った。ようやく一息ついた所に清水が湧き出ていた。それを飲んだとき黒姫は、房公と芳公(孫公はどこかに消えてしまった)の2人が先に水を飲んだことで立腹し「長幼 序あり。なぜ長上の黒姫に先に水を飲ませないで、若い者が先に飲むのか」と怒り出した。〔{{rm|34|6|蜂の巣}}〕
房公と芳公がしゃがんだまま立ち上がれなくなってしまう。黒姫は2人がワザとやっているんだと思い、腹を立てて1人で先へ行ってしまう。2人が動けなくなったのは神の仕組によるものだった。〔{{rm|34|8|暴風雨}}〕
ここから黒姫の一人旅が始まる。黒姫は神から4つの試練を受ける。
【①サルに冠り物を取られる】 〔{{rm|34|15|手長猿}}〕
黒姫は、[[熊襲の国]]の神司・[[建国別]]は自分が捨てた息子ではないかと思っていたが、人違いだと判明し、落胆して、夫の高山彦と思われる人物がいる[[火の国]]へ向かってトボトボ歩いていた。
川の畔で休んでいると、そこに大きな樫の木が1~2本立っており、枝に十数匹の手長猿がいる。すると枝にぶら下がったままサルがいたずらをして来て「笠」(蓑笠?)を取られてしまった。この笠は〈宣伝使のレツテルとも云ふべき大切な冠り物〉であった。
樫の木のサルたちはあちこちから集まって来て、集団で黒姫の頭上からイタズラをする。小便の雨を降らしたり、糞を垂れたり、樫の実を投げたり…黒姫は逃げることも出来ずに立ちすくんでいた。
しばらく見ているうちにサルの習性──人マネをするという習性が分かって来た。そこで黒姫はトンと飛び上がって地面に大の字になって寝転がると、サルもマネして樹上で飛び上がり、大の字になった途端、地面に雪崩のように落ちてしまった。
サルたちはキャーキャー悲鳴を上げて逃げて行った。冠り物は無事に戻って来た。
【②朽ちた丸木橋を渡り、生き埋めの三人を救出する】 〔{{rm|34|19|生命の親}}〕
[[火の国]]へ進む黒姫の前に、深い谷川が現れた。一本の丸木橋が架かっているが、端の方が7~8分腐っており、無事に渡れるかどうか分からない。どうしたらいいか迷っていると、3尺(約91センチ)ほどの小人の童子が現れて、迷いを深めるようなことを言う。黒姫はどうしたらいいか分からず涙を落としてうなだれると、どこからか[[玉治別]]の宣伝歌が聞こえて来た。〈汝の心に信仰の 誠の花の咲くならば 易く渡らむ神の橋〉という宣伝歌に黒姫は元気づけられ、思い切って足を踏み出すと、無事に橋を渡ることが出来た。
黒姫が神へ感謝祈願の祝詞を上げていると、お梅という14~5歳の少女が泣きながら現れた。事情を聞くと、姉の[[お愛]](愛子姫)と二人の男([[孫公]]、[[兼公]])が、「[[大蛇の三公]]」という極道者によって土の中に埋められてしまったという。
黒姫は急いでその埋められたという場所に駆けつけると、埋めた上に大きな石が積んであり、いくら押しても突いてもビクともしない。なす術もなく、涙をタラタラ流しながら一生懸命に天津祝詞を唱えていると、3尺の童子が8人どこからか現れて、巨大な石を軽々と取り除くと、煙となって消え去った。
黒姫は神助に感謝し、汗みどろになってお愛たち3人を掘り出した。3人は命の恩人の黒姫に涙を流して感謝した。
【③大蛇の三公と和解する】 〔{{rm|35|5|案外}}〕
黒姫は、土中から救出した3人と、[[お愛]]の夫の[[虎公]](虎若彦)らを率いて、犯人の[[三公]]の館に乗り込んだ。三公の館では子分を集めて慰労会が開かれていた。殺したはずの3人が現れたので幽霊が出たと言って大騒ぎになる。三公は神のお告げによりこのことを察知していたため、威儀を正して黒姫たちを出迎えた。黒姫の一行も三五教の教えを遵奉していたおかげで、今までの恨みを流し、両者とも和気あいあいとして酒を酌み交わし、和解の宴会となった。
【④キツネの出産を助ける】 〔{{rm|35|19|狐の出産}}〕
三公や虎公、お愛たちは「[[スッポンの湖]]」の大蛇を言向け和しに行くが、黒姫はここで別れて、[[徳公]]・[[久公]]の2人の従者を連れて火の国へ進んだ。
山の中で、旅の夫婦と出会い、身重の妻が産気づいて道端で苦しんでいるので宣伝使の神力で安産をさしてやって下さい、と頼まれた。黒姫は承知して天津祝詞を奏上し、天の数歌を歌い上げ、一生懸命祈願を凝らすと、妊婦から4人の子供が無事に産まれて来た。
夫婦は黒姫に礼を言うと、真っ白なキツネの姿に変わり、4匹の子ギツネを連れて森の中に姿を隠した。
徳公と久公は「何だ、キツネに騙されたのか」と苦笑するが、黒姫は「神様のお道に分け隔てはありません。人間はもちろん、鳥、獣、虫けらに至るまで助けて行くのが、三五教の教えです」と二人を諭した。
【捨てた息子との再会】 〔{{rm|35|24|歓喜の涙}}〕
黒姫は[[火の国]]の都の高山彦の館に辿り着いた。しかし高山彦は自分の夫ではなく、別人だった([[高国別]]=[[活津彦根神]])。
黒姫はガッカリする。そこへ[[玉治別]]が現れ、夫の高山彦は[[綾の聖地]]にいるということを聞かされる。そして玉治別の背中に富士山マークの白いアザがあるということを知り、玉治別が、自分が35年前に捨てた息子の[[富士咲]]だということが判明する。


=== 筑紫潟 ===
=== 筑紫潟 ===